芸能ニュース 2020年01月19日 09時00分
ジャスティン・ビーバーの病名公表で話題 気づかないうちにかかっているかもしれない「ライム病」とは
世界的に有名な歌手ジャスティン・ビーバーが8日、自身がライム病と診断されていたことを公表した。ジャスティンはうつ病を患っていたというが、その頃にも患っていたであろうライム病は肌荒れ、頭痛、倦怠感など、全身にあらゆる症状が出る。さまざまな症状の原因が分からないこともメンタルヘルス不調をきたす要因のひとつになり得る。 この発表で、初めて「ライム病」を耳にした人も多いのではないだろうか。 ライム病は感染症の一種で、マダニを媒介としてスピロヘータに分類されるボレリアという細菌に感染することで発症する。人畜共通感染症といわれ、マダニを媒介して人やペット、野生生物で感染を引き起こすことで知られており、人から人、もしくはペットから人へと感染することはない。 マダニに刺されるとかまれた部分が赤く腫れ上がり、周囲に広がっていく。発熱、筋肉痛、全身にだるさが出るなどインフルエンザに似たような症状が現れる。 病原体が全身に広がると吐き気や嘔吐をもよおし、リンパ節が腫れ、のどの痛みを数週間繰り返すようになる。 重篤な場合には激しい頭痛を特徴とする「髄膜炎」や、顔面の半分が麻痺する「ベル麻痺」といった症状や「不整脈」、心臓に炎症が及ぶ「心筋炎」といった心臓の症状も起こり得る。 治療が滞れば、数年にわたって関節の腫れや痛みを繰り返したり、手足のしびれや記憶障害を起こすことになりかねない。 ライム病と診断される患者はおおむねマダニにかまれたことを認識している人が多く、血液検査で診断できる。皮膚症状のみであれば14日間、適切な抗生剤を内服することで完治が見込める病気だ。しかし、症状が進行してから治療を開始すると抗生剤で病原体がいなくなった後にも「ライム病治療後症候群(Post-treatment Lyme Disease Syndrome: PTLDS)」といって、慢性的な痛みや疲れといった後遺症に悩まされることがある。 もともとアメリカで流行しているとされるライム病だが、日本にもマダニは生息しており、ライム病の報告例もある。 国立感染症研究所のデータでは1999年から2018年で231例。まれな疾患とも考えられるが、髄膜炎や関節炎など他の病気と診断されている例もあると考えられ、実際には報告されている例よりも多くのライム病患者がいる可能性も高い。 ライム病を避けるにはマダニから身を守ることが一番だ。マダニは都心部の公園などにも生息するが、野山や河原の草むらに多いといわれる。マダニの増える春から初夏、秋のアウトドア、野山へ出かけるときなどに、むやみに藪に入らない、肌を見せない格好をする、ダニの色が分かりやすい色の服装にする、防虫剤を使うなど注意したい。ペットにマダニがついていることに気づいた場合には不用意に取らず、早めに動物病院を受診してほしい。 マダニにかまれたと思ったら24時間以内にダニを取り除くこと、早めに治療を行うことで症状が軽く済む可能性が高くなる。 ダニにかまれたくらいで、と思いたいところだが後遺症が出れば数年にわたり日常生活に支障が出てしまう。気温が上がればアウトドアを楽しむ人も増えるだろうが、服装などには十分に注意することをお勧めする。参考:MSDマニュアル https://www.msdmanuals.com/ja-jp/プロフェッショナル/13-感染性疾患/スピロヘータ/ライム病NIID 国立感染症研究所 https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/524-lyme.html文責:医師 木村 ゆさみ