社会 2025年09月30日 09時00分
“日本一危険な動物園”が閉園、残された動物は300頭以上 自治体の責任を指摘する声も
“日本一危険な動物園”のキャッチフレーズで20年間営業していた民間動物園「ノースサファリサッポロ」が9月末で閉園する。しかし、300頭以上の動物の行き先が決まっていないという。29日放送のテレビ朝日系「モーニングショー」で解説した。サファリパークと聞くと、車やバスなどで園内を回るイメージがあるが、ここは歩いて回るタイプのサファリパーク。トラやハイエナなどの危険な動物に、金網越しではなく、トングなどを使って至近距離で直接エサやりができるプレミアム体験が人気だった。園内のいたるところに「何が起きても自己責任」という旨の看板が掲示されている。閉園の主な理由は、宅地や商業施設の開発が制限される「市街化調整区域」に動物園を無許可で開設したことだ。運営会社は札幌市からこれらの無許可建築物を撤去するよう求められた。事実上の閉園命令である。運営会社は、2029年末までにすべての建物を撤去する計画を提出している。市は開業前の2004年10月、無許可で建設工事が行われていることを確認し、運営会社に許可を得るよう行政指導した。しかし、同社は応じることなく建設を進めて開園し、さらに施設の拡張も続けてきた。2005年に10棟だった建物は、昨年12月には183棟まで増えていた。この間、市は文書や口頭で再三指導をしてきたが、同社は「改善する」と回答するものの従ってこなかったという。問題は、園で飼育されていた640頭の動物のうち、ライオンなどを含む300頭以上の動物の受け入れ先が決まっていないことだ。現在まで、円山・旭山・釧路市・おびひろなど、道内の動物園はいずれもノースサファリからの動物を受け入れていない。専門家によると、国内の動物園の多くは狭く、動物が死なないとスペースが空かないという。札幌市保健所の担当は「移動が簡単な動物から受け入れが進んでいる。ライオンやトラなど移動が難しい動物が残っているのではないか」と話す。番組は車で出てきた前社長に直撃取材したが、無言で立ち去ってしまった。これまで閉園した動物園の例で言えば、2004年に閉園した定山渓熊牧場は、20年経過した今も運営会社が受け入れ先のないクマ2頭を飼育しているという。命を預かるということはそのくらい責任が重いのである。コメンテーターの猿田佐世弁護士は「(市は)土地の利用については違法と指摘していたかもしれないが動物の飼育については許可していた。国も市も補助金を付けていたし、それを今になって返還請求とは」と行政側の責任も指摘する。レギュラーコメンテーターの玉川徹氏は「定山渓熊牧場のように飼い続ける体制がとれない場合は、殺処分も法的には認められている。そうならないために行政も知恵を絞るべき」と話した。例えば、トラは絶滅危惧種だ。世界中でどのように増やすべきか模索しているときに殺処分の選択肢が出てくる矛盾を関係者らはどう考えるのか。