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父親との骨肉の争いから2年 大幅赤字『大塚家具』久美子社長の試練と挽回策

 2015年、父との骨肉の経営権争いで、激しいプロキシーファイト(株主委任状争奪戦)の末に勝利を収めた大塚家具(東京・江東区)の大塚久美子社長。しかし、その大塚家具が'16年度(1月〜12月)の決算で、売上高は前年比20.2%減、営業損益が45億円と、創業以来最大の赤字に転落し、懸念の声が上がっている。

 振り返れば、父娘の激しい戦いの原因は、それまで前会長であり父親の大塚勝久氏(現・匠大塚会長)が作り上げてきたビジネスモデルの見直しを巡る攻防だった。勝久氏は、店舗入り口で受付を行い、会員向けの丁寧な接客を強みとした高価格路線。対して久美子氏は、自由に店内を見て回れる入店しやすさを重視した接客方法の導入、さらに幅広い価格帯の家具を取り揃え顧客層拡大を図るというもの。
 大塚家具の広報担当者は、厳しい経営状況の背景をこう説明する。
 「前会長の会員向けの丁寧な接客と高価格路線と対立したことで、今の大塚家具が低価格路線にシフトすると取られ、イメージが崩れた面もあります。そうではなく、私たちが目指したのは、従来の高額商品もあれば中価格帯の品もある幅広い品揃えで、より多くのお客様に自由に来店していただくことです。そこが上手く伝わらなかった面は否定できません」

 大塚家具は一連の騒動で、'15年春には「お詫びセール」も行い、消費者に低価格イメージを加速させた。さらに既存大型店では、接客方法の変更によってまとめ買いが減少。応接セットやダイニング家具・寝具の売り上げが前年比2ケタ減に陥るという事態を招いた。
 これらがもたらした大赤字で、久美子氏の経営能力を疑問視する声まで飛び出すこととなった。

 しかし、そんな逆風にもめげず、'17年12月期の決算予測は売上高を70億円近く伸ばして約530億円、3億円の黒字を見込むなど、あくまで強気な姿勢を崩さない。
 「'16年9月からは、リユース事業を開始している。これは同社購入商品だけでなく、他社購入品でも買い取り・下取りをし、職人が補修し再販するシステム。ここについ最近、俳優の伊勢谷友介氏が代表の『リバースプロジェクト』との共同事業も加わり、期待値は高い」(家具雑誌編集者)
 『リバースプロジェクト』とは、アンティーク品、不良品、使用済み素材を活かし、デザイン性を高め、現代の生活スタイルにマッチした新商品に再生させるというもの。例えば桐ダンスなどはパーツ分けして金具を取り付け、オリジナル商品に変身させるのだという。2月10日には、リニューアルした旗艦店の本社ショールーム(東京・有明)のオープンと同時に、隣接した新業態店舗も開業した。

 加えて挽回となる肝は、神奈川県住宅供給公社などと連携し、老人ホーム入居者に提案する家具のリユースだ。
 前出の広報担当者は言う。
 「神奈川県などとの連携は、売り上げの大きな柱になるにはもう少し時間が掛かります。リユースなどは、資源を大切にして持続可能な社会システムを構築、貢献する企業スタンスを、消費者や社会に明確に発信することが重要という捉え方。経営、売り上げ増という面ではもう一つ、重要な核があります」

 それがリゾート会社、ホテル、住宅販売会社などとの法人提携販売の拡大だという。
 「前会長の経営体制の下では、法人との取引をどんどんやめ、数十億単位で売り上げが減少しました。これを現社長体制では、再び提携販売を再強化し、業者と一体となった家具販売の構築に努めてきました。それがようやく軌道に乗り、'17年度決算の黒字転換のキーになると思います」(同)
 さらに今後は、地方の百貨店やショッピングセンターなどとの提携を強め、小規模店なども積極的に展開し売り上げ増を図るという大塚家具。

 こうなると、一方の勝久氏が立ち上げた匠大塚も気になるところだ。
 「真骨頂の、とにかくいい品を顧客に届けるという意味では今も徹底している。埼玉県春日部市に設けた店は売場面積2万7000平方メートルという日本最大級の広さで、ゆったりと買い物ができる。他の家具店とは競合しにくいため、安定して顧客を掴み続けられるのではないか」(経営コンサルタント)

 匠大塚の広報担当は言う。
 「東京・日本橋で本社をスタートさせ1年。デザイン事務所も間もなく1年。春日部も6月で1年になります。昔ながらの顧客の方々も訪れていただき『いいものを置いている』と応援していただいております。知名度はまだまだですが、法人との取引に力を入れ、匠大塚ならではの評価を着実に得るつもりです」

 久美子氏は逆風を跳ね返し、父親に目に物を見せることができるか。

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