自分は、もともとジュディが大好きでして。’69年に亡くなっているので、残念ながらリアルタイムでは見ていないんですが、彼女が主役のドロシーを演じた『オズの魔法使い』をはじめ、数々のミュージカル映画にドハマりしました。
ジュディが好きすぎて肉筆のサインも手に入れましたし、関連物を買い漁りましたね。彼女がきっかけで、40〜50年代のMGM時代のミュージカル映画のサントラ盤をどれだけ聴いたか。
もちろん、ジュディの評伝なども読んでいて、だから今回の映画ではバッサリ切り捨てられた部分、たとえば、何番目かの旦那が献身的に尽くしたとか、昔の共演者が力を尽くして彼女を助けようとしたなどのエピソードは、あえて描かれていないのも気付きました。
本作で描かれるのは、ひたすら朽ちていくジュディ…といっても享年47歳ですから、まだ若いんですが。その描写に絞り込んだことが功を奏していると感じます。
本作でも、幼い頃から様々なハラスメントを受け、食べものもろくに食べずに体型を維持し、休みなく働いたなどの思い出が語られますが、実際はもっと悲惨。評伝によると、プロデューサーの性奴隷であったし、ドロシー役でのとろんとした目つきは薬中毒の証だとも…。日本でいうと、美空ひばりの子役時代のような存在だった彼女は、当時の米ショービズ界の光と影を体現していたんですね。
逆に、“ジュディオタク”の自分も知らなかったのですが、パンフレットによると、当時、そして今もなお彼女が「ゲイのアイコン」であること。抑圧と挫折に苦しみ、それでも立ち向かうジュディに、ゲイの人々は深く共感しているのだとか。自分が泣きそうになったラストシーンでは、その事実が鍵を握りますので、パンフもぜひ一読を。
それにしても、主演のレネー・ゼルウィガーの歌の上手さには驚きました。歌だけでなく、独特の訛り、声色、癖まですべてマスターしたそうですが、「そっくり」を超える迫真の演技力。アカデミー主演女優賞を獲得するだけのことはあります。昨年末には、「AI美空ひばり」が話題になりましたが、「AIジュディ」を待たずとも、奇しくもジュディの享年と同じ年のレネーの熱唱で、十二分に満足できました。
_____画像提供元(c)Pathé Productions Limited and British Broadcasting Corporation 2019
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■ジュディ 虹の彼方に
監督/ルパート・グールド 出演/レネー・ゼルウィガー、ルーファス・シーウェル、マイケル・ガンボン、フィン・ウィットロック、ジェシー・バックリー他 配給/ギャガ 3月6日(金)全国ロードショー。
■ミュージカル映画のスターとしてハリウッドに君臨したジュディ・ガーランド(レネー・ゼルウィガー)は、遅刻や無断欠勤を重ねた結果、映画出演のオファーが途絶える。その後、巡業ショーで生計を立てる日々を送るものの、借金が増えるばかりの彼女は、1968年、幼い娘や息子と幸せに暮らすため、イギリスのロンドン公演へと旅立つ。
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漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。
『情報ライブ ミヤネ屋』(日本テレビ系)レギュラー出演中