★謎のインテリジェンス組織の全貌
5月にロシアで行われる対独戦勝記念式典に安倍総理が出席を検討中と聞く。そもそも日本と戦ってもいないくせに、習近平が閲兵する“抗日戦勝利”の軍事パレードをのこのこと訪れた朴槿恵のひどさとはもとより比較になどならないが、しかし組んでしまったのは国策の誤りだったとはいえ、一応、あくまでドイツは元・同盟国のはず。いわばその敗北を祝うイベントに笑顔で参加するのは心情的に、かつ対外的に与える印象としていかがなものなのか? と首をやや傾げざるを得ない。
だが、北方領土交渉打開の契機にとこれを強く首相に進言したのが、警察庁出身の北村滋・現内閣情報官だという。旧KGB出身のプーチン大統領と最近サシで会った彼は内閣情報調査室のトップ。常日頃スパイ天国と揶揄されがちな日本でCIAやMI6、モサドほどの機動性や攻撃性には欠けるが、総理の目と耳を支える最重要機関である。
その守備範囲が重なる公安警察、さらに公安調査庁との熾烈な駆け引きをはじめ、正直、ここまで手の内を見せてよいものかと疑いたくなるほど驚きの報告が連続する。中でもモリカケ騒動でいえば、カケのほうの影の主役、前川喜平・元文科次官が「貧困女性の生活実態を調査」のためと称して足繁く出会い系バー通いの事実が読売新聞にすっぱ抜かれるタイミングの問題や、中国当局が自国のスパイに下した指令書の戦慄的な内容まで本書は余すところなく教えてくれる。
それによれば日本は中国にとって依然“解放”されるべき対象であり、究極目的は「日本人民民主共和国」の樹立なのだとか。目下の急務は新型肺炎の感染拡大を封じ込めることだが、はるかに警戒すべきは、政界・マスコミはじめ各分野に工作がどう浸透しているか、だ。
_(居島一平/芸人)
【昇天の1冊】
『実録女の性犯罪事件簿』(鉄人社/750円+税)は、本誌好評連載『男と女の性犯罪実録調書』から、女性が男に対して犯した性犯罪を中心に抜粋、文庫本化した1冊。著者はノンフィクションライターの諸岡宏樹氏。
「逆淫行」「乳児遺棄」から「ストーカー」「痴情のもつれ」「ネオン街のトラブル」など全7章構成。取り上げている事件には、ニュースで報道され、話題になったものも少なくない。
「逆淫行」の章の「小6男児を籠絡した22歳シングルマザー」は昨年1月、香川県高松市で起きたが、犯人の女性が「美しすぎる」と一部で騒がれた。現在もネットで閲覧できる彼女の容姿は、確かにかわいい。
「逆淫行」のケースでは、名古屋の中学校音楽教師が教え子の男子生徒に夢中になり、地元紙に不適切な関係をすっぱ抜かれた事件も所収している。
この他、「SMプレーの行き過ぎで男を死亡させたグラドル」(痴情のもつれ編)、「遊び人の彼氏を殺すまでの経緯をブログに綴っていたデリヘル嬢」(ネオン街のトラブル編)など、恐ろしい内容ばかり。
性犯罪というと女性が一方的に被害を受けると想像しがちだが、どっこい加害者となる女たちの情念、執念深さ、ドロドロぶりは男のソレよりすさまじいのでは、と思ってしまう。
確かにストーカーの事例などは、女のほうが数も、泣き寝入りする被害者も多いかもしれない。この本に取り上げた事件も、ほんの氷山の一角?
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)
【話題の1冊】著者インタビュー 清野とおる
東京怪奇酒 KADOKAWA 1,000円(本体価格)
★ハッキリと“おばけ”を_見る必要がある
――怪奇現場で酒を飲むという“怪奇酒”ですが、恐怖のリアリティーがハンパないですね。やはり居酒屋で飲む酒とは違いますか?
清野 酒屋やスナックでは、面白い出会いや刺激的な出来事は多々ありますけど、近頃はちょっとやそっとの奇人変人やトラブルでは動じられなくなっちゃいました。「この店はこうだな」とか「この客はこうだな」とか、ある程度、先の展開が読めてしまうので、どうにも物足りない。
街に対しては昔から“ドM”の姿勢で臨んでいるので、もっと動じたいし、もっとうろたえたいですね。「ウワー!! どうなっちゃうんだろう!!」と、心がかき乱されるような、未知なる刺激の中で飲酒したい。といっても、ヤーさん絡みの怖い店やぼったくり店とか、そういう類いの刺激は不快感しか残らなので求めてはいません。こうなったらもう“怪奇現場”に飲みに行くしかありませんよね!
――心霊体験をすると、一方で幸運が舞い込むこともあるとか。清野さんと壇蜜さんとのご結婚も関係しているのでしょうか?
清野 本書で描かれている『事故物件夫婦』のように、“怪異”とうまいこと共存することによって、幸運をキャッチされる人もいるようですが、僕に関しては無関係だと思います。明らかに運気が下がりそうな怪奇スポットを中心に巡ってますけど、漫画では描いていないプライベートで、俗に言う“パワースポット”的な場所にも、多々訪れているので、そっち関係でいつのまにやら運気が上がっちゃってた可能性が高いですね。怪奇スポットオンリーなら、今頃、僕はこの世にいないかもしれません(笑)。
――ご自身には霊感がないそうですが、現場で変わったことはありましたか?
清野 取材中、「このタイミングでこんなこと起こるか?」というような、あり得ない偶然は何度もありました。しかし、それが必然だという確たる証拠は何もないので、偶然の域は出ません。「偶然ではなく、必然だ! 心霊現象だ!」と断定するためには、やはり一度ハッキリと“おばけ”を見る必要がありますね。霊感のある人がうらやましすぎて、うらめしいです。
――今後はどんな怪奇現場に行きたいと考えていますか?
清野 場所はどこでもいいので、実体としてハッキリと目で見ることのできる“おばけ”が出現する場所があれば、ぜひ行きたいですね。そして、今まで培ってきた人生観や死生観がひっくり返るような体験をしてみたいです。読者の皆様、情報をお待ちしています。
_(聞き手/程原ケン)
清野とおる(せいの・とおる)
東京都板橋区志村出身。東京都北区赤羽在住。携帯サイト『ケータイまんが王国』にて『東京都北区赤羽』を連載して注目を集める。現在は『モーニング・ツー』にて『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』、『SPA!』にて『ゴハンスキー』を連載中。