8月末から段階的に閉園し、跡地は米映画大手ワーナー・ブラザースが『ハリー・ポッター』のテーマパークを2023年度にも開園する方向で調整しているという。
テーマパーク業界の厳しい経営状況が浮き彫りになった一方、大手民間信用調査会社の帝国データバンクの調べでは、遊園地・テーマパーク経営企業162社の’18年度の収入高合計は8711億8300万円と、対前年度比1.6%増。2期連続で損益が明らかになった企業106社のうち、黒字企業は83社、2期連続の黒字企業は72社と、テーマパーク業界全体を見ると好調のようだ。
「ただ、2期連続で赤字企業は16社にも上ります。つまり、テーマパーク業界では二極化が進んでいるのです。特に中堅テーマパークは入場者の減少を止める手立てがなく、ジリ貧なところが多いですね」(経営コンサルタント)
閉園が明らかになった『としまえん』では、ピーク時の1992年に390万人だった入場者数が、2018年には112万人まで落ち込んでいる。
「中堅テーマパークは、少子高齢化や施設劣化の逆風が直撃している。都心の『としまえん』でさえ閉園ですから、地方のテーマパークはもっと厳しいでしょうね」(同)
実際、福岡県北九州市の『スペースワールド』は、2018年末に閉園へと追い込まれている。
「1990年に旧八幡製鉄の跡地にオープンした『スペースワールド』は、’97年に来場者数が年間216万人に達した。しかし、アトラクションの更新が少なく、マンネリ化したことから、徐々に入場者が減り経営悪化。2005年に、営業権をリゾート運営会社に譲渡、立て直しを図ろうとしたが、結局、再建できず’18年閉園に追い込まれたのです」(観光事業関係者)
現状、まだ生き延びている中堅テーマパークでも厳しい経営が続いているという。
「1964年に三重県桑名市に開業した『ナガシマリゾート』や、西武鉄道系列で’88年にオープンした横浜市の『横浜・八景島シーパラダイス』の運営会社は、共に収入高ランキングで全国20位以内に入ってます。しかし、’17、’18年と売上高が対前年比マイナスとなり、厳しい運営を指摘されています。今後どう巻き返すかが注目されています」(同)
中堅テーマパークが苦しんでいる一方で、大手テーマパークは好調のようだ。
「大手テーマパークの売上は伸びています。ただ、大手同士はもちろん、海外テーマパークとの競争も激しさを増しています。競合他社に打ち勝つには、大型投資をして、質の高い新アトラクションを造ることが必須条件です」(前出・経営コンサルタント)
ただ、大型投資をすると入場料の“値上げ”は必至で、客離れが懸念される。
「質の高いアトラクションを造れば、入場料が高くなっても客離れは起きません。実際、大阪の『ユニバーサル・スタジオ・ジャパン』(USJ)では、’14年に『ハリー・ポッター』エリアを作ったところ、翌年にかけ入場料を大幅にアップしたが、入場者数は年間200万人も増加、さらに年々勢いが増しています」(同)
そのため、人気テーマパークでは大型リニューアルを急ピッチで進めているという。
「『東京ディズニーランド』(TDL)は、2017年から約750億円を投じてファンタジーランドのエリアを拡張した『ニューファンタジーランド』が’20年4月にオープンする。それに伴い入場料も値上げする。例えば、有効期限が1日の『1デーパスポート』は、現行の大人7500円から8200円となる予定です。東京ディズニーシー(TDS)も2500億円を投じ、’23年度完成予定で『アナと雪の女王』などの新エリアを建設中です」(テーマパーク業界関係者)
USJは600億円を投じて今夏『スーパーマリオ』の新施設をオープンさせる。
大型リニューアルが急ピッチで進んでいるテーマパーク業界では、異業種からの新規参入も活発化している。
「開園当初の苦しかったUSJを再建させた『再建請負人』の森岡毅氏が率いる企業が、大和証券グループと手を組んで、’24年を目途に沖縄で500億〜1000億円規模のテーマパーク建設に乗り出しました」(同)
他にも、愛知県と『スタジオジブリ』は、同県長久手市に350億円を投じ『魔女の宅急便』『千と千尋の神隠し』など、世界を魅了したジブリ作品を再現したテーマパーク『ジブリパーク』を’22年秋にオープン予定だという。
新規参入が増えていることからも、二極化現象が治まる気配はなさそうだ。