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世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第359回 壮絶! アベ・ショック!

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提供:週刊実話

 2020年2月17日、内閣府は’19年10〜12月期の経済成長率を発表した。壮絶、としか表現のしようがない結果に終わった。

 経済成長率、年率換算▲6.3%(対前期比▲1.6%)。

 6.3%のマイナス成長とは、前回の増税時(’14年4〜6月期)の▲7.4%以来の落ち込みになる。’19年10〜12月期の経済成長率について、多くのエコノミストが年率換算▲4%前後を予想していたのだが、現実ははるかに下を行った。

 今回の経済成長率の中身を見ると、民間最終消費支出(個人消費)が年率換算で▲11%(対前期比▲2.9%)。民間住宅が同▲10.4%(対前期比▲2.7%)。民間企業設備が同▲14.1%(対前期比▲3.7%)と、民需が壊滅状態に陥っている。消費、投資、共に民間は全滅だ。

 まさに、アベ・ショックの始まりである。

 もっとも、’19年10〜12月期の民需が悲惨な状況になっているのは、成長率発表以前から分かっていた話ではある。景気動向指数(一致指数)は、’19年9月から12月にかけ、6%近くも下落してしまった。同じく’19年10〜12月期の鉱工業生産は▲4%。

 生産が大きく落ち込んだのは、当たり前だが需要縮小の影響である。実質消費を見ると、’19年10月が対前年比▲4%、11月が同▲1.4%、12月が同▲3.3%と、3カ月連続でマイナスに陥っている。国民が消費できなくなり、結果的に生産が急収縮しているのだ。

 消費が大きく落ち込んだ結果、生産が減り、経済成長率が前回の増税以来の大幅なマイナス成長になったのである。つまりは、消費税増税が原因だ。

 ’19年10〜12月期の純輸出(いわゆる「外需」)は、対前期比+0.5%となっているが、これは輸出増ではなく「輸入激減」によるものだ。純輸出は「財・サービスの輸出財-サービスの輸入」で計算されるため、輸出が減ったとしても、それ以上に輸入が減ればプラス化してしまう。

 実際の数字を見てみると、同四半期の輸出は年率換算▲0.4%。そして、輸入が何と同▲10.1%。年率換算で、10%以上も輸入が減っているのである。輸出の下落幅を、輸入が大きく下回ったため、純輸出がプラスに「見える」という話にすぎず、別に外需が回復しているわけではない。そして、輸入の激減は、もちろん内需の弱さを反映している。国内の需要が減っているため、輸入の必要がなかったのだ。

 ちなみに輸出にしても、’19年は一度も「対前期比でプラス」にならなかった。企業は、外需(輸出)の落ち込みを受け、設備投資意欲が落ち込んでいたところに、消費税増税。結果的に、設備投資が’14年消費税増税時(対前期比▲1.9%)を上回る落ち込み(同▲3.7%)になってしまったと考えるべきだろう。

 経済成長率のマイナスについて、過去のデータを振り返ると、リーマン・ショック期の’08年7〜9月期が対前期比▲1.3%、同年10〜12月期が同▲2.4%、’09年1〜3月期が、同▲4.8%と、3四半期連続のマイナス成長となった。とはいえ、さすがにリーマン・ショック期のマイナス成長を「日本政府の責任」とするのは、無理がある。

 もちろん、リーマン・ショック前に内需を強化し、少々の外需縮小があったとしてもプラス成長を維持できるように、経済の体質を強化しておく必要はあった。リーマン・ショック前、日本経済はアメリカの不動産バブルを中心とする外需への依存を高め、結果的に「外国からのショック」により国内経済が大きな打撃を受けた。とはいえ、リーマン・ショック自体は、別に日本政府が引き起こしたわけではない。

 それに対し、今回の大幅なマイナス成長は、100%、日本政府の責任である。しかも、’14年4月に増税し、経済成長率をマイナスに叩き落し、その反省もないまま’19年10月に再増税。安倍政権は、もはや言い訳はできない。今回の経済ショックは「アベ・ショック」なのである。

 恐ろしいことに、安倍政権は1月22日に公表された月例経済報告において、
「景気は、輸出が引き続き弱含むなかで、製造業を中心に弱さが一段と増しているものの、緩やかに回復している」
 と、表明している。1月22日の時点では、’19年10〜11月の惨状が数字に出ており、’19年10〜12月期はマイナス成長になることが明らかだったにも関わらず、
「景気は緩やかに回復している」
 と、平気で「嘘を」つく。

 さらには、経済成長率年率換算▲6.3%が発表された後においても、
 安倍総理大臣「経済対策の効果もあり基調として緩やかな回復が続く」(2月17日 国会答弁)

 麻生財務大臣「前回(の消費税率)引き上げ時と比較すると小さい。内需のファンダメンタルズはそこそこだ」(2月18日 閣議後会見)

 と、もはや総理・財務相までもが堂々と「嘘」を重ね、消費税増税という失策を否定している有様だ。

 しかも「基調」「緩やかな」「内需のファンダメンタルズ」「そこそこ」といった抽象用語を多用する。この手の抽象用語を使う政治家は、基本的にはプロパガンダを展開していると理解して構わない。つまりは、嘘つきだ。

 ’20年に入って以降、新型コロナウイルスの影響で、輸出はさらに落ちる。そこに、消費税増税による内需縮小を受けた「さらなる設備投資抑制」が来る。しかも、新型コロナウイルスは、当然、国内消費も縮小方向に向かわせる。さらに、7月1日に再増税(キャッシュレス決済によるポイント還元の終了)。さらにさらに、五輪不況。

 別に、煽りたいわけではない。とはいえ、昨年10月に増税を強行した安倍政権が、まさに「最悪のタイミング」で増税をしてしまったことは疑いない事実なのだ。

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みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。

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