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やくみつるの「シネマ小言主義」 全米最大TV局の恥部を、生々しく映画化『スキャンダル』

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提供:週刊実話

 この映画を見る直前に、たまたまCS放送でやっていた『グッドモーニングショー』を家で見ていました。2016年に公開された、中井貴一主演の「TV局の裏側」を描いたコメディーです。偶然にも続けて見た同じテーマの本作と比べると、日本の方はなんとぬるいことか。トランプ政権になってからのアメリカはしょうもない国に成り下がってしまったようにも思えますが、’16年に実際に全米最大のTV局で起きたスキャンダルの顛末を、平気で映画にする懐の深さがあるのですから侮れません。

 世界的に「#MeToo」の騒動が起きる以前から制作が始まった本作では、TV業界の帝王と崇められていたFOXニュースのCEOロジャー・エイルズのセクハラを、クビを言い渡されたベテラン女性キャスターが告発します。

 この彼のセクハラのやり方が、あきれるほどベタ。

 自分も60歳という老境に入った今、つくづく思うのですが、人間の人生なんて実にあっという間です。たとえ早くにトップに登りつめたとしても、その権力を行使できる期間なんてせいぜい20〜30年じゃないですか。その短期間に、人間っていうヤツは、いったい何をやってるんだと、晩節を汚すこの男を、つい人間観察的に眺めてしまいました。

 ただ、権力を笠に着たセクハラというのは、日米問わず、いまだにいくらでもあることは想像に難くない。出版界ですら、本を出版してもらうために枕営業したという話を、当事者から聞いたこともあります。本作では、ベテランから新人まで、立場も年齢も違うキャスター3人が告発していくのでスカッとしますが…。

 中でもシャーリーズ・セロン演じる売れっ子キャスター、メーガン・ケリーが、立候補中のトランプの女性差別的言動に切り込んでいく様は見ている方もドキドキ。その後、トランプがツイッターでケリーを中傷する様子も描かれ、この映画の実録ぶりを発揮しています。

 日本人には少々、分かりにくい米TV局の実情やトランプ政権との関わりは、パンフレットに解説がありますので一読を。それを書いている米国在住のジャーナリストの町山智浩さんは早稲田の漫画研修会の後輩。今やデーブ・スペクターよりアメリカの内実に詳しい方です。

 ところで、一時はTVのおかげで映画が見られなくなり、多くの映画館がつぶれましたが、今やシネコンに観客が詰めかけ、TVが「終わコン(終わったコンテンツ)」などと言われています。50年後に残ってるのは映画なのかも…。まあ、自分はもういませんがね。

____画像提供元:(c)Lions Gate Entertainment Inc.

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■スキャンダル
監督/ジェイ・ローチ 出演/シャーリーズ・セロン、ニコール・キッドマン、マーゴット・ロビー、ジョン・リスゴー、アリソン・ジャネイ、コニー・ブリットン 配給/ギャガ 2月21日(金)、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー。
■大手テレビ局FOXニュースの元人気キャスターのグレッチェン・カールソン(ニコール・キッドマン)が、テレビ界の帝王であるCEOのロジャー・エイルズ(ジョン・リスゴー)を提訴する。メディア界に激震が走る中、局の看板番組を担当するキャスターのメーガン・ケリー(シャーリーズ・セロン)は、今の地位に上り詰めるまでの過去を思い返し、動揺していた。一方、メインキャスターの座を狙う若手のケイラ・ポスピシル(マーゴット・ロビー)は、ロジャーと直接対面するチャンスがめぐってくるが……。

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漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。
『情報ライブ ミヤネ屋』(日本テレビ系)レギュラー出演中

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