放送前から、多くのアイドルファンの注目を集めた今回のコラボ企画。その顔ぶれを見れば、興奮せざるをえないのもうなずける。まずAKBグループから、AKB48、SKE48、NMB48。AKB48の公式ライバルである乃木坂46は、妹分の欅坂46を引き連れて参戦。ももいろクローバーZ率いるスターダスト軍団からは、ももクロ、私立恵比寿中学、チームしゃちほこの3グループ。そして、モーニング娘。'15、℃-ute、アンジュルムの3組が、ハロー!プロジェクトを代表して出演した。
全11グループが一同に介した様は、まさしく豪華絢爛。しかも、公式ライバルという関係ゆえ、一定の距離を保ってきた「48」と「46」両グループが初のコラボ。2012年に指原莉乃のプロデュースで行われた「ゆび祭り」へのBuono!出演や24時間テレビでの共演などはあるものの、AKBとハロプロがここまでガッツリと絡んでコラボを行うのもはじめてのことだ。これだけでも、奇跡と呼ぶにふさわしい。
さらに、パフォーマンス中にも、ギミック的な“奇跡のコラボ”が盛りだくさん。その数々を、一部ではあるがメドレーの時系列に沿って振り返ってみよう。
まずは、全グループの選抜メンバーによる「ヘビーローテーション」。ももクロ・百田夏菜子が握るマイクで℃-ute・矢島舞美が、乃木坂・白石麻衣に支えられてエビ中・廣田あいかが、娘。・鞘師里保のサポートでNMB48・山本彩が、AKB48・渡辺麻友とのペアでしゃちほこ・秋本帆華が歌う。この時点でもう「あり得ない」光景だ。
長年のハロヲタで知られる指原莉乃が「LOVEマシーン」の「♪ディア〜」を歌えば、「恋愛レボリューション21」で高城れにに見せ場を奪われてムッとする生田衣梨奈。しかも、高城が着ていたのは、モーニング娘。「黄金期」の象徴とも言える金色の衣装。これは、実際に吉澤ひとみが着用していたものを、娘。サイドが貸し出したものだとか。
テレビ初共演となるももクロ&AKB48の「行くぜっ!怪盗少女」では、頬の代わりに互いのアゴを寄せる高城れにと山本彩、側転を決める玉井詩織の後ろで「アナゴさん」のイラストを完成させる渡辺麻友など、それぞれの“特技”を披露。トドメは、百田夏菜子と高橋みなみによるダブルエビ反りジャンプ。これは、のちに高橋本人が「私は老体に鞭打ちました」とコメントしているように、打点の高さに差が歴然。とはいえ、どれもバラエティーに強いフジテレビらしい、楽しい演出だった。
最後は、一般による「踊ってみた」も大流行した「恋するフォーチュンクッキー」を総勢99名全員で踊って大団円。約16分、前代未聞のアイドルコラボメドレーは、確かに「奇跡」と呼ぶにふさわしい内容だった。放送直後から、ツイッターなどでは「この顔ぶれが揃うなんて感動!!」「ネタも多くて楽しいメドレーだった」の声が多数。しかしその一方で、「バカにするな!」「これなら出ないほうがよかった」などの批判も少なくなかった。不満の声の多くは、グループによって扱いの差が大きすぎた点を指摘していた。
48&46、スターダスト、ハロプロ。いわば「アイドル3大軍団」から、全11グループが垣根を超えて集結したこの企画。一般的には、各グループがそれぞれの持ち歌をメドレー形式でパフォーマンスしたうえで、なにかしらのコラボ曲を披露するのがありがちな見せ方だ。しかし、フジテレビは「持ち歌」ではなく、あくまでも「コラボ」を重視して大胆に演出。予定調和を避け、普段は見られない組み合わせを見せたという点でも、これはこれで成功だったように思う。しかし、℃-ute、アンジュルム、私立恵比寿中学、チームしゃちほこは、最後まで持ち歌がまったく使われずに終了(欅坂46は持ち歌なし)。和気あいあいとしたコラボとともに、「対バン」のようなバチバチ感も期待していたはずのファンは拍子抜けし、自分たちが応援するグループの不遇に「あれでは、事実上のバックダンサーじゃないか!」と憤ったのだ。
なかでも煮え湯を飲まされたのは、老舗ハロー!プロジェクトだろう。モーニング娘。'15からの使用曲が、あいかわらず10年以上前の「LOVEマシーン」と「恋愛レボリューション21」だったのは仕方がないにしても、ハロプロのリーダーである矢島舞美が所属し、全出演グループのなかでもダントツのキャリアを誇る℃-uteが、自前の曲を持たない欅坂46よりも見せ場なし。また、アンジュルムのファンも、今年1年間「めちゃ×2イケてるッ!」のエンディングテーマとしてフジテレビに貢献してきた「大器晩成」が、“当然”披露されるものと思っていたはずだ。
この扱いに忸怩たる思いを抱えたのは、ファンだけではないようだ。℃-uteは、「℃-ute一同」という異例の署名で、「これが今のハロー!プロジェクトです(中略)沢山のアイドルの方達に刺激を受け、まだまだ成長して行きたいと思っています(中略) ハロー!プロジェクト、℃-uteまだまだ、がんばるぞ」とブログにコメント。アンジュルムのリーダー・和田彩花はよりストレートに、「いつか、自分たちの曲を歌って踊りたい!」と、番組のコメント動画や自身のブログで語っている。
さらに、ハロプロで多くの振り付けを担当し、ライブなどではパフォーマンス全体への指導も行うコリオグラファーのYOSHIKO氏は、FNS歌謡祭のリハに関するブログに「p.sすんごい歯くいしばった! ガマンした」と添えている。教え子たちに対する扱いに、まったく納得がいっていないのが見て取れる。
もちろん、すべてのグループを平等に扱う必要はない。どのような演出をしても、メンバー本人や身内のスタッフがなにかしらの不満を持つのは仕方がない部分もある。しかし今回は、メディア側の立場にあるBillboard JAPANの編集長・平賀哲雄氏までも、「1曲も持ち曲パフォーマンスできていないグループがたくさんいますよ。すごく楽しみにしていたんですけれども」とのツイートを番組名のタグ付きで発信している。単なる「不平等」というよりも、せっかく集めた人気アイドルたちをバックダンサー扱いにしたのでは、「もったいない」と感じたのかもしれない。
万感入り交じる今回のコラボの結果を、それぞれの事務所がどのように受け取ったのか。それによっては、本当に“一夜限りの奇跡”で終わってしまう可能性も?
【リアルライブ・コラム連載「アイドル超理論」第8回】