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新重賞今昔物語 1998年阪神3歳牝馬S 常識を覆した若駒 スティンガー

 その勝利は常識を揺さぶった。仁川の直線、444キロのかれんな鹿毛馬が突き抜けた瞬間、実はファンよりもプロのホースマンが驚いたのではないか。藤沢和調教師が放った一撃はそれほど強烈だった。

 スティンガー=写真=が阪神JF(当時は阪神3歳牝馬S)を制したのはデビューからわずか29日目。それはグレード制が導入されて以降、最短でのGI勝利だった。しかも前走の東京・赤松賞を勝ってからたった7日、つまり連闘だった。連闘でGIを勝った馬は、1989年に安田記念を制したバンブーメモリー以来、2頭目の快挙だった。

 しかも、同じ連闘でも値打ちはまったく違う。バンブーが経験豊富な古馬だったのに対し、スティンガーはキャリア3戦目、それも美浦から初めての長距離輸送があった。繊細な牝馬には厳しい条件がそろい過ぎていた。
 これにファンが下した評価は3番人気。父サンデーサイレンス、姉にサイレントハピネスを持つ良血馬だ。新馬→赤松賞と楽に連勝した内容なら1番人気に支持されても不思議はなかったが、さすがに半信半疑といったところ。これはプロも同じ。また、破竹の勢いの藤沢和師へのやっかみもあったのだろう。「牝馬が連闘でGIを勝てるほど甘くない」という声が大勢を占めていた。
 だが、トレーナーは自信を持っていた。「この馬の能力は相当なもの。新馬、特別をダメージなく勝てれば連闘でいく」と青写真ができていたという。大事なのは常識ではない。サラブレッドの進化と可能性を見極め、それを具現化する勇気だ。

 スティンガーは見事に2歳女王に輝いた。翌年の桜花賞にはぶっつけで登場。大きく出遅れて12着に敗れたが、秋には3歳牝馬としてJRA史上初の天皇賞出走、0秒3差の4着に健闘してみせた。GI勝利は阪神JFのみだが、鮮烈なインパクトを残した。限界に挑戦し続けた馬だった。

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