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キャバ嬢が生まれる瞬間(73)〜男の気持ちを理解したかった女〜

南野有紀(仮名・21歳)

 私が高校の時に付き合った7歳年上の男がいた。その彼はサラリーマンで、一定の収入があったため、車で色々な所に連れて行ってくれたし、食事代もすべて出してくれた。そんな生活が当たり前になると、もう同年代の男の子とは付き合えない。彼の身長は175センチあったし、顔も悪くない。それに男らしくて、女々しい部分を一切見せないところが好きだった。

 そんなある日、彼の鞄からキャバクラ嬢の名刺を見つけた。その時、私はまだ幼くて、キャバクラ=浮気をするような場所と捉えてしまい、彼にとても激怒したことがある。ただお酒を飲んで軽い会話をしただけと、弁明していたけど、私はどうしても許せなくて「もう2度と行かないでほしい」って頼んだ。

 口では「行かない」と言った彼だけど、数か月後、また私は彼の散らかった部屋で新たなキャバクラ嬢の名刺を見つけたんだよね。その頃になると、私は些細なことでキレるようになっていて、もはや出会った当初とは立場が逆転していた。男らしいと思っていた彼も、私の前だとすぐに萎縮するようになっていて、やがて関係は終わった。

 それから数年後、フリーターになった私は、その時の彼のことを思い出していた。なぜあの人は、私が行かないでと散々言ったのにキャバクラへ通い続けたのだろうかと。私はそれが知りたくて、気が付くと夜の世界へ足を踏み入れていた。

 でも今ならわかる。私達はお客さんの話を、まず否定したりせず、あたたかく聞き入れる。それがどんなに情けない話であってもだ。そういうことが過去の私には出来てなかったんだよね。相手に男らしさを求めるばかり、彼には無理をさせていたんだと思う。男の人はいくつになっても甘えん坊なのだろう。そんなことが、キャバクラで働いてわかった気がする。今でもナヨナヨした男は嫌いだけど、昔よりは少しだけ弱い部分を受け入れられるようになったかな。今度彼氏が出来たら、そういう気持ちを忘れないようにしたい。

(取材/構成・篠田エレナ)

写真撮影:lublud

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