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福島原発賠償バブルにいまだ沸くいわき市「表と裏」レポート(2)

 いわき市内にある被災した楢葉町民が入居する応急仮設住宅団地は、来年3月末で原則終了となる。この仮設住宅に住む60代の女性はこう話す。
 「もちろん楢葉に帰りたいという気持ちはあります。その反面、こちらに来て“住めば都”ということも実感しています。できることなら、みんなでお金を出し合って、この場所にマンションを建てられればいいのにねって話しているんです」

 約50戸あった楢葉町の仮設住宅は半分近くが空き家となった。その一方で、この2月よりJRいわき駅から徒歩数分の新築高級マンションが売りに出された。全52戸の価格帯は3000万〜6000万円弱と幅広い設定だが、高い価格のものから次々と契約が決まり、3カ月で残りわずかな状態となった。
 震災の直後は多くの被災者が避難してきたので、いわき市の賃貸物件はほとんどなくなり、月の賃料も1.5倍から2倍近くまで跳ね上がったという。また、大家や賃貸業者も、国の全面バックアップで支払いが滞ることのない被災者に優先的に物件を紹介するケースが相次ぎ、この状況に憤るいわき市民も多かった。

 市内の歓楽街「田町」で約30年スナックを営む50代女性は不満を吐露する。
 「億の賠償金を手にした被災者の中には、いわき市にマンションを数部屋購入し、家賃収入で手堅くやっている人もいます。やっぱり人間、大金を手にすると自慢したいんでしょうね。ここら辺りのビルが1棟2億円といわれていて、『それなら買えるな』なんてさらりと言っていますよ。私たちがあまりチヤホヤしないせいか、そういうお客さんはフィリピンパブの方に流れていますね」

 いわき市南部に位置する小名浜地区は港町として栄え、ソープランド街があることでも有名だ。地元の関係者によると、震災以降、5時間、6時間といった長時間コースを設定する通称“買い取り”をする客が増えたという。3時間以降はソープ嬢と一緒に外出可能な店もあり、中には9時間の“買い取り”をする客もいるそうだ。
 「“買い取り”の多い日は決まっていて、そんな日は、『昨日、賠償金の振り込みがあったからだろう』と従業員同士で囁いています。以前はフロントガラスから通行証が見える車で、駐車場がいっぱいになったこともありました。もちろん除染業者やゼネコン関係者もいると思いますが、お金を持っているからか、横柄でマナーの悪い人が目立ちますね」(ソープランド関係者)

 浪江町、双葉町、大熊町、富岡町(一部)の帰宅困難区域の住民は高速道路のほか、税金や医療費が免除され、これもいわき市民との軋轢を生む要因となっているようだ。そして、軋轢に屈してしまった人もいる。
 双葉町出身の30代女性は原発事故の後、夫婦でいわきに移住し、市内に新築の一軒家を建てた。しかし、その生活は長くは続かなかった。女性が当時をこう振り返る。
 「ポストに『税金払え』と書かれた紙が入っていたことがありました。私の家は地域の自治会にも入れてもらえず、回覧板も回ってこない。これが村八分かと痛感しました。孤立状態に耐えられず、土地も建物も売って、再び故郷のそばに引っ越しました。私たち以外にも近所との確執で家を手放す家庭がありました」

 行政は、いわき市民と移住してきた被災者の溝を解消するため、何か方策を取っているのだろうか。
 いわき市の復興支援担当職員は「今は軋轢はないと考えている」と強調する。そのうえで、今後も県と避難元の自治体と連携し、交流施設などを設置することで、市民と被災者との融和を図っていくとしている。もちろん被災者に対しても努力を求めている。
 「被災者も税金を払うべきといった声は市民から寄せられており、そのような不公平感を解消するため、避難されている方に対する適正な税金の徴収を国に要望しております」(いわき市総合政策部政策企画課)

 いわき市の賠償金バブルは街の表舞台から身を潜め、水面下で膨張しているようだ。
 原発事故から6年が経過した今も、いわき市民と被災者の軋轢は根が深い。

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