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キャバ嬢がキレる瞬間(10)〜スーパーヘルパーの悲劇〜

 ナンバー1ミズキちゃんはアイドル並みで、色んな年齢層のお客さんがいる。指名はいつもかぶりっぱなしで、ヘルプでつく子は大変。

 わたしを含む、スーパーヘルパーキャバ嬢たちは自分のお客さんの獲得や呼ぶこともままならず、ミズキちゃんの客の相手であたふたしていた。物分りのいいお客さんの相手ならまだ楽だけど、酔っ払いの客に「同じ金払ってんのに、なんでヘルプの時間が長いんだ」と文句いわれて、とばっちりを受ける子も少なくない。

 ナンバーワンともなると、普通の嬢が相手しずらいお客さんをも扱うのが上手いから、そういう面倒なお客さんも多いんだよね。

 そんな中、4人ほどの団体さんがやってきて、ようやくわたしたちにも希望の光が差してきた。何日ぶりのフリー客だろう。

 ボーイさんに呼ばれたミズキちゃんは、どこかしらの指名席に戻るのだとヘルパーのだれもが思った瞬間。

 店長のコールを聞いて耳を疑った。

 「ミズキさん、7番テーブルフリー」

 わたしと相棒の千夏は顔をひきつらせて見合わせた。

 これだけ指名客がいるのにこの状態でフリーにつける?? なんでわたしたちをフリー客につけてくれないの??

 あまりの理不尽さに、わたしと千夏は店が終わった後店長を捕まえてつめよった。

 「指名の客にだけつけていたらミズキの良さをその時に来ていたフリーの客は知らないことになる。うちの看板を積極的に出して何が悪い」

 「それじゃ指名料払ってきてるお客さんが可哀相!」

 「お前ら何のためのヘルプだよ。指名客もまともにいなくて暇だろが。大体ミズキを最初につけたからって、その後違う奴と交代してるんだから、平等だぞ。それ以降の結果は各人の営業力の差だろうが?」

 確かに…。店長の言うとおり。ぐうの音も出ない。

 「でも、最初からいきなりミズキちゃんが行ったら、わたし達どうしたって不利ですよ」

 「嫌なら店やめな、己の努力不足を俺にぶつけられても困るんだよ」

 店長のいうこともわからなくはないけれど、それでもやはり最初にフリーにつくとよほどのことがなければ、次回来るときには最初についた嬢を指名してくれるお客さんが多いのだ。

 所詮、店長も一人の男だから、「ミズキちゃんが可愛いのでいっぱい稼がせてあげたいのかもね」と、千夏と店の帰りにやけ酒をくらいながら、愚痴を明け方までこぼしまくるのだった。

文・二ノ宮さな…OL、キャバクラ嬢を経てライターに。広報誌からBL同人誌など幅広いジャンルを手がける。風水、タロット、ダウジングのプロフェッショナルでもある。ツイッターは@llsanachanll

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