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ソロアイドル時代到来の予感も依然として厳しい現実

 おニャン子クラブが切り開き、モーニング娘。が受け継ぎ、AKB48のブレイクによってスタンダードとなった「グループアイドル」というスタイル。特に、2010年頃から数年間、一大アイドルブームのなかでは、アイドル=グループアイドルの印象すらあった。

 そんな状況へのカウンター現象なのだろうか、近年、「ソロアイドル」が注目を浴びることも多くなっている。おニャン子以前がそうだったように、ソロアイドルがスタンダードとなる日がやってくるのだろうか?

 SKE48時代、抜群の歌唱能力から「歌姫」と呼ばれた出口陽(でぐち あき)がミニアルバム『Daybreak』を3月9日にリリース。ハイクオリティーな内容に、アイドルファンのみならず幅広い層から注目を集めている。また、2014年に乃木坂46を脱退した大和里菜も3月16日にミニアルバム『sakura』を発売し、念願のソロデビューを果たした。10年のハロプロエッグ卒業後、一時的なユニットを除き、常にソロアイドルとして活動してきた吉川友も、1年ぶり10枚目となるニューシングルのリリースと東名阪ツアーの開催を発表したばかりだ。

 その他にも、グループ在籍時からソロ活動を並行しているアイドリング!!!の元リーダー・遠藤舞、元BiSのゆるキャラ好きアイドル寺嶋由芙、強気なビッグマウスと「北の橋本環奈」とも呼ばれる洗練されたビジュアルで話題の吉田凜音など、ソロとして活躍するアイドルは近年増加傾向だ。グループアイドル全盛を経て、「ソロアイドル時代の到来」と見る向きも少なくない。

 ただその一方で、消えていくソロアイドルも多い。09年のデビュー以来、「ソロアイドルの第一人者」として活動し続けてきた小桃音まいも、7年間のソロ活動に終止符を打ち、新たにユニットを結成することを発表。昨年8月、お台場で行われたTIF2015のステージ上で「活動休止」を宣言し、ファンに衝撃を与えたみきちゅ。そのみきちゅ(現・瑞稀ミキ)と元TAKENOKO▲の篠原ゆりとともに「エムトピ」を結成したミズタマリも、かつてはソロプロジェクト「いずこねこ」として活動していた。

 さらに、「私がソロアイドルの時代を作って、私が終わらせます」の言葉通りにムーブメントを牽引していくものと思われていた「さくら学院・初代生徒会長」の武藤彩未が、昨年末に活動休止を宣言。「必ず戻ってくる」とはしているものの、最後のライブから3か月が経った今もまったく音沙汰はなく、今後の予定は白紙状態だ。

 アイドル業界が「ハロプロ一強」だった時代にも、ソロとして活躍していたアイドルは少なくない。その代表が松浦亜弥だ。2001年4月に『ドッキドキ!LOVEメール』でデビュー。ハロプロブームの後押しも受け、次々にヒット曲を生み、その年の暮れには『第52回NHK紅白歌合戦』への出場も果たした。

 ビジュアル、歌唱&ダンス、トークスキル。どこにも穴のない松浦には、当時「アイドルサイボーグ」との呼び名もついたほど。それは、アイドルファンにありがちな“盛った”評価などではなく、彼女と仕事をしたアーティストや業界人たちもその能力の高さに驚嘆し、賛辞を贈っている。松浦が2010年にリリースしたカバーアルバム『Click you Link me』を、「あややが歌がうまいのは知っていたけど、なんというか、うまいだけじゃなく説得力があるんだよなぁ」と評したのはスガシカオだ。また、夫・山下達郎のラジオ番組に出演した竹内まりやも、「20代の女性歌手で一番うまいのは、松浦亜弥ちゃん」と語っている。「ソロアイドルの理想形」が松浦亜弥だったと言っても過言ではない。

 その松浦亜弥でさえ、09年に催されたコンサートツアーでは、2階席にはほとんど人がいない状態。ツアー活動から、事実上の撤退を余儀なくされた。

 当時、23歳。アイドルとしての「賞味期限」が切れるには、いささか早過ぎる。事実、AKB48のメンバーとして依然高い人気を誇る小嶋陽菜は27歳。松浦と同い年の高橋愛がモーニング娘。を卒業した11年、彼女の実力と人気はピークを誇ったままだった。理想形・松浦亜弥の限界は、そのまま「ソロアイドルの限界」とも考えられる。

 実際、前述のみきちゅやいずこねこのように、ユニットに転身する者は多い。アップフロントの2人組ユニット「Bitter&Sweet」の田崎あさひも、当初はソロとして活動していた。元SKE48の松井玲奈が完全なソロ歌手ではなく、姉妹ユニット「チャラン・ポ・ランタン」とのコラボレーションでグループ卒業後初のシングルをリリースするのも、ソロアイドルの難しさを懸念したからなのかもしれない。

 なぜ、ソロアイドルのブレイクと長期に渡る活躍は難しいのか。昨年3月、出演番組の中で「アイドルをひとりで背負うには、すごい覚悟がいる。集団でいると、そこはなんとなくごまかせる」と語ったのは、アイドルに造詣が深いマツコ・デラックスだ。このアイドル論はアイドルファンの間で物議を醸したが、あながち間違ってはいない。10人、数十人のグループにおいては、メンバーによって能力の優劣、意識レベルの差などがあって当然だ。ただ、現代がソロアイドルにとって厳しい時代である理由は、それだけではないだろう。

 ソロアイドルの難しさを考えるには、相対するグループアイドルの魅力を今一度見つめなおすのもひとつの手だ。

 「CDの売上を伸ばすには、メンバーを増やせばいい」

 そんな乱暴なアイドル論が交わされることがある。メンバーがたくさんいれば、その分、ファンもたくさん集まるだろうという理屈だ。握手などの接触系イベントによる販売促進が当たり前の時代、そうした面があるのも否めない。同じ1080円を出すならば、たったひとりよりも、10人のアイドルと握手できる方にお得感を抱くのは仕方がない。

 しかしながら、重要なのは単に頭数が増えるだけではなく、メンバー数を増やせば「より多くの個性が揃えられる」という点だ。多種多様なビジュアルや性格を持つアイドルを提供すれば、ファンの多種多様な趣味にも対応できるようになる。色白と色黒の女の子2人組ならば、色白好きにも色黒好きにもアピールできる。

 パフォーマンス面では、グループにしか生み出せないボーカルの厚み、ダンスの一体感も大きな強みだ。また、女子中高生世代ならでは「わちゃわちゃ感」も、グループアイドルにしか出せないものだろう。裏を返せば、「多面的なキャラクター」を持ち、歌とダンスに「幅広い表現力」を備え、ひとりでも「楽しげな空気」を作り出せることができれば、ソロアイドルにも成功の道はあるとも考えられる。

 厳しさはあるものの、ソロ活動をベースとするアイドルは、まだまだ誕生しそうな気配だ。かつての松浦亜弥を凌駕する逸材が登場することに期待したい。

【リアルライブ・コラム連載「アイドル超理論」第21回】

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