社会 2025年09月24日 09時00分
全国の名湯を8000倍に濃縮、普通の湯に垂らして“本物の温泉”を再現する「クラフト温泉」
日本が世界に誇る観光資源「温泉」。そんな全国の名湯の温泉成分を8000倍に濃縮させて持ち運べるようにした“クラフト温泉”が大きなビジネスになっている。20日放送のテレビ東京系「ブレイクスルー」が追った。番組で取材したのは、国内の大手商社や世界的な金融機関で石油取引を担当してきた三田直樹氏。現在はベンチャー企業LeFuro(ルフロ)のCEOだ。三田氏によれば、地下深くでマグマが冷えて固まった花崗岩は温泉成分が大量に含まれた優良資源だという。温泉水とその地の鉱石を細かく砕いたものをタンクに入れて温泉成分を抽出、8000倍に濃縮したクラフト温泉を作っている。家で湯に垂らせば、すぐに本物の足湯が体感できる。これを読むと、市販の入浴剤を思い浮かべる人も多いだろうが、あれは香りと色味を上手く再現することに重点が置かれているものだ。クラフト温泉は入浴剤とはまったく別物で、成分が源泉と同じなので、温泉と同じ効能が得られる。例えば、“リュウマチに効く”みたいな効能だ。クラフト温泉を広めるために三田氏が取り組んでいるのは製造装置の開発だ。長い年月をかけて地下深くで温泉ができあがる自然の原理を応用している。「温泉は完全に地産地消で終わっているので、資源としての可能性・価値を見出しきれていない。世界の9割ぐらいの源泉が日本の狭い列島に集中している」(三田氏)全国2万8000カ所ぐらいの源泉の総湧出量は1日あたり2200万バレル。三田氏によれば、1リットル60~70円ぐらいの温泉の値段がつくと仮定すると、年換算で80兆円になるという。三田氏は全国の温泉地10か所にクラフト温泉製造装置を設置する予定だ。これまでは、温泉の湯をパイプラインやトラックで運ぶという発想はあったが、抽出した成分を使って離れた場所を温泉地にするという発想はなかった。クラフト温泉はすでにビジネスとして動いている。霧状にミスト化したクラフト温泉が体感できる湯治スパが東京・港区にある「TOJI TOKYO」だ。現在は15店舗を運営しており、年内に3店舗を開業予定だ。クラフト温泉は海外にもビジネス展開しつつある。温泉を使って簡単にヘルスケア・ウエルネスができるということで、サウジアラビアから引き合いがきており、昨年から輸出も始まっているという。また、2022年にはドバイに拠点を設立した。「サンプル出荷すると瞬殺で売れてしまう。水の上位機種みたいな感じで買ってもらえる」(三田氏)来年はUAEに2カ所、オマーンに3カ所、温浴施設をオープンする予定だ。日本は資源の乏しい国だが、温泉は全国至る所にある。産油大国ではなく“産湯大国”になる可能性を秘めている。