スポーツ 2020年08月20日 11時50分
ロッテ・和田、覚醒は福浦コーチのおかげ? セオリーを無視した独自の指導、工藤監督も積極プレーに脱帽
3試合連続でスタメン出場を果たした千葉ロッテ・和田康士朗外野手が、また「足」で見せてくれた。 プロ初スタメンを果たした日本ハム戦では、いきなりヒットを放つと、第2、3打席でも快音を連発。いずれも二盗を決めている。「50m5秒8」のスピードは支配下登録を勝ち取った今年6月の会見でも伝えられていたが、和田の足が8月19日の福岡ソフトバンクでさらに強烈なインパクトを見せてくれた。 >>ロッテ・田村、お立ち台での発言に「余計なこと言い過ぎ」 ファンが危惧する不吉なジンクス、歴史的連敗に繋がったケースも<< 初回、和田が四球で出塁した。2番・中村奨の4球目、ヒットエンドランが決まり、和田は一気に本塁まで帰って来た。打球はセンターのやや右、通常、この個所に転がった打球で一塁から本塁へ突っ込んで来ない。ソフトバンクの中継プレーにミスはなかった。 試合後、ソフトバンク・工藤公康監督もこう評していた。 「本塁には行かれないという考えが(守っていた野手たちに)あったのかもしれない。走者は先を狙っているという意識を…」 この和田の走塁に、今年のロッテの怖さ、強さも秘められていた。2点ビハインドとは言え、リスクを犯して本塁まで行かず、無死一、三塁の場面で3番バッターに繋ぐ“手堅い選択”もあったはず。いや、次打者がクリーンアップなので、大半の選手は三塁で止まっただろう。しかし、「ほんのちょっとでも可能性があれば行く」という、積極的な攻撃がチームの好調さにつながっている。 この和田の経歴も興味深い。今さらだが、彼は高校野球を経験していない。中学、高校では陸上部に所属していたが、高校在学中、元球友が活躍するのをテレビで見て、「自分も!」と決心したそうだ。その後、独立リーグ・富山を経て、千葉ロッテに育成枠で指名され、3年目の今年に支配下を勝ち取った。 「和田のスピードからして、1番に固定したい選手ですが、従来の1番タイプのバッターとは異なります。ゴロやライナー性の打球を広角に打って出塁を狙うのではなく、フルスイングしてきます」(プロ野球解説者) その打撃力が昨季途中から急激に良くなったという。 「福浦和也二軍ヘッド兼打撃コーチの指導の賜物です」(関係者) 一般論として、スピードプレーヤーの教育を任された場合、フルスイングを止めさせ、出塁率を高めるコンパクトスイングに改造するが、福浦コーチは違った。フルスイングも和田の長所と捉え、「打ちに行く時、猫背になっているから直せ」とだけ指示したという。この背筋を伸ばす微調整がハマッて、打撃力がアップしたそうだ。 「福浦コーチは現役時代、打撃不振に何度も陥り、何度もフォームを改造しています。成功したものもあればそうでなかったものもあり、それでも、歴代コーチの指導、助言を素直に受け入れたことで奥の深い打撃論が構築されました。選手ごとにその特徴に合わせた指導をしています」(前出・同) チーム盗塁数「46」は12球団トップ。盗塁のリーグトップは和田の「14」だから、彼の台頭と同時にチームの機動力も高まったと解釈できる(同時点)。フルスイングで、足も速いタイプと言えば、トリプルスリー(打率3割、本塁打30本、盗塁30)のソフトバンク柳田が重なってくるが、「ロッテ一筋の苦労人コーチ」に巡り逢えたことも大きいようだ。(スポーツライター・飯山満)