社会 2021年01月09日 07時00分
連休明け「仕事に行きたくない」「やる気が出ない」意外な原因と、対処法
正月の連休が終わり、いざ仕事初めとなると、「仕事に行きたくない」「なんとなくやる気が出ない」と感じたり、なかなか休み気分が抜けないという人も少なくない。 しばらく続いたリラックスムードから切り替えるのは難しいが、原因をもう少し掘り下げてみれば、その憂鬱な気持ちを解消するためのヒントが見つかるかもしれない。 例えば、連休中のスケジュールが混み合い十分な休息が取れていなかったり、コロナ禍で思うように動けず、ステイホームでストレスが発散できなかったことがモチベーション低下の原因になっている場合がある。また、不規則な生活リズムや日を浴びない、運動不足という不健康な生活が続くと、「幸せホルモン」とも呼ばれる神経伝達物質「セロトニン」の分泌や働きが低下しやすくなる。セロトニン不足になると、憂鬱な気分や不安感が増大し、感情のコントロールを難しくさせるといった状態を引き起こしやすい。 しかし、休日が続いたことと原因が直結しない場合もある。仕事をしている時間そのものを苦痛に感じている人の中には、その職務内容が能力に見合っていない場合がある。その仕事に必要とされる知識や思考力、技術や体力などの能力が不足していることによって、仕事の達成感や成功体験の数より忍耐や失敗体験の方が多くなり、仕事に対する苦手意識が高くなってしまうのだ。 完璧主義的な考えが強い人の中には、小さなミスでも重大に捉えてしまい、自尊心が傷つきやすい人もいる。こういった場合も、仕事をすることに対して感じるストレスが大きくなりやすい。 こうしたストレス要因は通常業務においても心理的な負担になり得るが、連休を挟むことによって、連休中の解放感と仕事初めとの切り替え時に大きな振れ幅が生じるため、仕事を始めることにより大きな負担を感じてしまう。 >>知らぬ間に症状が現れている? 長引くコロナ禍でのメンタル不調予防対策<< このように、正月明けに「仕事に行きたくない」と思ってしまう原因は人によって様々だが、その憂鬱な気持ちを克服するためには、まず自分なりの具体的な理由を知ることが欠かせない。自分で考えて原因を把握・対処することができれば良いが、それが難しい場合は、人に話せば客観的に自分を分析しやすくなる。もしくは、紙やスマホのメモに書き出すなどして考えを可視化するのも有効な方法だ。 具体的な問題点が見えたら、次は適切な対処方法を導き出すわけだが、こうしたストレスへの対処法として代表的なものに、「ストレスコーピング理論」という考え方がある。この理論では、原因を解決することに重点を置く「問題焦点型コーピング」と、感情のコントロールに重点を置く「情動焦点型コーピング」の2つに大別される。 例えば、原因が能力不足にある場合、業務内容の負担を軽減したりサポートしてもらえるように上司に相談する、あるいは「これが難なくこなせるようになればスキルアップできる」と考えてモチベーションを上げるといった対処法は、問題焦点型コーピングにあたる。 一方、情動焦点型コーピングは、一時的に気分をコントロールすることが主たる対処法だ。例えば、「嫌な気分になったら別のことを考える」「気分転換にカラオケに行く」「深呼吸をして気持ちを落ち着かせる」などがそれにあたる。 こうしたストレスコーピングは、連休明けの仕事だけでなく、人生のあらゆる問題解決に応用できる。特に問題焦点型コーピングのスキルは、メンタルの強化や自己成長、ひいては日常的な幸福感のアップに欠かせないものだ。 とはいえ、考えることに疲れている場合や、なかなか客観性が持てず、感情が先行してしまうこともある。そんな時は、情動焦点型コーピングを活用したい。客観性を持つためには、問題と一旦距離を置くことも有効だ。例えば、連休明けの出勤に関するものなら、気分転換のために通勤コースや通勤スタイルを変えてみたり、気が重い中で出勤した自分へのごほうびとして「帰宅時においしいものを食べる」と決めて出発するという方法もある。 解決策を考える気にもならず、目標を持つ気にもなれないという場合は、とりあえず「出勤する」ということを目標にしてみるのも良い。家では憂鬱だったものの、いざ仕事現場に着いてみれば、意外となじんでしまうこともある。 いずれにしても、「行きたくない」という気持ちは、れっきとした心のストレスサインだ。そのシグナルを無視して無理を続けると、心の病にも発展しかねない。無理をし過ぎず、場合によっては休職や転職も視野に入れながら、自分なりに心が軽くなるための対処法を見つけてほしい。文:心理カウンセラー 吉田明日香