例えばセブン&アイHD傘下のそごう・西武百貨店。まず、そごうは、'12年に八王子店(東京都)、'13年呉店(広島県)、さらに昨年9月には、柏店(千葉県)を閉鎖。西武百貨店も'10年の有楽町店閉鎖を皮切りに、'13年に沼津店(静岡県)、昨年は2月に春日部店(埼玉県)、9月に旭川店(北海道)を閉鎖。今年2月には筑波店(茨城県)、八尾店(大阪府)と連続閉鎖する。
「旭川店は約2万4000平方メートルの売り場に約220店のテナントを抱え、市の商店街の核として多くの人に愛され、賑わってきました。ところが'16年2月期の売上高は約105億円とピーク時の半分以下に落ち込んでいた。そして、ついに踏ん張りきれず、41年という長い歴史に幕を閉じることになったのです。これで北海道から西武は完全撤退、そして道北には百貨店がゼロになってしまった」(経営アナリスト)
百貨店業界の雄、三越伊勢丹HDも、同様の苦戦を強いられている。今年3月、三越は千葉店と多摩センター店(東京都)が閉店する。伊勢丹は昨年11月の中間決算時に、松戸店(千葉県)、府中店(東京都)、広島店、松山店(愛媛県)などの閉店検討のニュアンスを打ち出しているのだ。
こうした事態となった要因は、いったいどこにあるのか。
「西武の旭川店の撤退を見ても明らかです。同店の売り上げ激減は、長引く不景気による消費不振に加え、一昨年3月、大型SC(ショッピングセンター)のイオンモールがはす向かいに開業したことによるもの。SCの低価格の食品や雑貨目当ての客が、イオンに流れたのです。そんな状況を揶揄して一部のアナリストからは『百貨店は何でもあるが何もない』との声も聞こえてくる。客のニーズと少しずれてしまい、SCやユニクロ、ニトリ、さらにはネットショップに流れてしまったことが、百貨店全体の不振にもつながっている。さらに、ここへ来ての中国人観光客の爆買いの陰りが追い打ちをかけている」(同)
別の商業コンサルタントは、こう明言する。
「今や百貨店は、新宿や銀座、日本橋、渋谷など東京の旗艦店と呼ばれる大型店以外は採算を取るのが難しい時代に突入した。その証拠に、'15年度の百貨店売上高トップは伊勢丹新宿本店2742億円、2位は阪急うめだ本店2183億円、3位が西武池袋本店1900億円、4位三越日本橋店1683億円、5位高島屋日本橋店1366億円となっていて、20位ぐらいまでを見てもほとんどが東京、大阪、愛知、京都などの大都市の百貨店なのです。つまり、最低でも人口100万人以上の都市でなければ、百貨店のターゲットである高所得者層は掴めない。逆を言えば、地方においてはそうした客が専門店に分散してしまっているということです」
そのため、新たな顧客獲得に向け攻めの姿勢に打って出る百貨店も多い。
その先頭を切ったのは、東急百貨店。東急不動産など東急グループが総力を上げ、昨年3月、約2000億円を投じて銀座5丁目の数寄屋橋に地下2階地上11階の『東急プラザ銀座』をオープン。125の専門店が入居する。
銀座松坂屋を運営していた大丸松坂屋百貨店やパルコなどを展開するJ・フロントリテイリングも、森ビル、住友商事などと新会社を立ち上げ、銀座6丁目に総額約900億円を投じ、複合施設『GINZA SIX』を今年4月にオープン予定だ。
「ここには松坂屋をはじめ世界のブランド店が進出、さらに観世能楽堂の拠点を設けたり、観光バスの発着所なども設置する。東京五輪を視野に世界のインバウンド客がショッピング、飲食、文化に触れられる一大複合施設になるという。百貨店からさらにスケールを拡げる姿勢です」(前出・経営アナリスト)
不振に喘ぐ三越伊勢丹HDの三越日本橋店も東京五輪までに200億円を投じ、40代に特化した店づくりを目指すという。
「大丸松坂屋は、これまで縮小していた“外商”に力を入れ、医者などの高額所得者をピンポイントで狙う。さらに特別会員向けに高級ホテルで商談会を開催し、オリジナル商品を販売するなど外へ打って出て、ジワジワと売り上げを伸ばしている。この動きに高島屋なども注目し、サイトを立ち上げ外商部門に力を入れ始めています」(同)
果たして、生き延びるのはどこか。