同ユニットは2010年6月末に始まった、メディアワークス(現在はKADOKAWA)刊の「電撃G'sマガジン」の読者参加企画から発展した、音楽、コミック、ゲーム、アニメを含むメディアミックスプロジェクト“ラブライブ!”発祥のユニットとなっている。
簡単にいうと、“ラブライブ!”というプロジェクト内の架空のアイドルユニットがμ'sで、それぞれG'sマガジンの誌面上で創作されたμ'sキャラクターの演者として、声を当てている声優や、当時グラビアアイドル(現在はほぼ全員が声優業に参入している)だったメンバーが、ライブを行っているユニットが今回紅白に出場するμ'sとなっている。
ドラマや映画で同様の例を出すとすれば、2001年にフジテレビ系列で放送されたテレビドラマ『ムコ殿』でTOKIOの長瀬智也が演じた“桜庭裕一郎”がその例に該当するだろう。長瀬はドラマ内だけではなく、現実でも桜庭裕一郎名義でCDをリリースしたが、それと同じく、μ'sもCD上ではキャラクターが歌っている設定となっていると思って差し支えない。他にも、ドラマ『愛をください』(フジテレビ系列)で、主演の菅野美穂が“遠野李理香”という役名でCDをリリースしている。映画としては『スワロウテイル』でCHARAを中心に結成された“YEN TOWN BAND”や、『NANA』で中島美嘉が演じた“大崎ナナ”の曲が有名だろうか。これらの楽曲では演者PVで役柄になりきって歌ったりしていたが、μ'sでは声優たちが声を当てたキャラクターの、PV風アニメ映像がそれのかわりとなっている。ちなみに、アニメ映像ではなく、実際に声優たちがライブを始めたのは、意外と遅く、2012年の2月が最初だ。
実はアニメ・ゲーム業界では1982年放送の『超時空要塞マクロス』に登場するリン・ミンメイを始めとして、架空のアイドルを売り出すという企画はよく行われていた。最近では2007年1月25日に発売したXbox360用アイドル育成シミュレーションソフト『アイドルマスター』と、その関連作品のヒットが有名なのだが、『ラブライブ!』はそれらのコンテンツとは誕生の頃から若干違い、従来のアニメやゲームではあまり実現できない、ユーザーの声を積極的に取り入れることを主眼に置いていた。具体例を出すと、登場人物である9人のアイドルユニット名であるμ'sは、ユーザー投票によりグループ名に決定したという経緯がある。また、現実のAKB48系列グループのような投票システムも取り入れられており、PVでのセンターが、G'sマガジンなどでのキャラクターの人気投票で決定される。よくアニメファン、特に声優ファンの間では「2.5次元」というアニメなどの2次元的なイメージの、3次元への投影が喜ばれることが多いが、μ'sというユニットは、その2.5次元的イメージを、ユーザー密着の方針でより高めたプロジェクトといえる。
その、μ'sへの人気が爆発的となったのが、2013年1月から4月までのTOKYO MX他、地方局で放送したアニメ『ラブライブ!』の放送からで、この頃あたりから、同作とμ'sの熱狂的なファンは「ラブライバー」として知られるようになった。現実に活動しているμ'sのライブ会場も、回を重ねるごとに大きくなり、現在では単独ライブとなると、最大キャパ3万人以上ともいわれる、さいたまスーパーアリーナのスタジアムモードでも、あっという間にソールドアウトするほどだ。
2014年4月から 7月まで放送されたアニメ第2期も爆発的なヒットを記録し、その勢いのままに2015年6月13日から公開された『ラブライブ! The School Idol Movie』では現在の累計興行収入が28億円を突破しており、これは深夜アニメ史上初で、アニメ作品の劇場版興行収入としても、異例の数字となっている。
とにかく爆発的に人気のアニメ内でのユニットが、μ'sあると認識していれば、まず問題はないだろう。ちなみに、作中ではμ'sなどのユニットは「スクールアイドル」と呼称されるのだが、そのあたりを説明するとややこしくなるので除外する。もし今年の紅白歌合戦で気になった人がいれば、2016年1月からNHK Eテレで『ラブライブ!』がNHKで初めて放送されるとのことなので、確認してみてはどうだろうか?(斎藤雅道)