ちなみに、同庁の設立は文部官僚や競技団体関係者の悲願とされ、'11年に成立した「スポーツ基本法」には、その設置検討が明記されていたほど。ところが、利権のせめぎ合いから、ニッチもサッチもいかない状況が続いていたのだ。
霞が関関係者が言う。
「これまではJOCが選手強化、日本体育協会が普及、五輪招致が文科省、パラリンピックは厚労省とバラバラ。これが原因で統括官庁の設置が叫ばれていたが、反面、利権と官庁間の縄張り争いが渦巻き、実現は不可能と見られていたのです。ゆえに、今回の設置決定で起きる利権の集約に、官僚や族議員らが舌なめずりしている状態なのです」
無論、気になるのはその利権だが、同庁の設置は官僚たちにいったいどんな効果をもたらすのか。経済アナリストが解説する。
「五輪の直接経済効果は3兆円といわれるが、これが経済を底上げし、一説には全国への波及効果は150兆円になるとも試算されているのです。そのためスポーツ庁は職員1000人規模で、約3兆円の予算がつくとみられている。また、長官、審議官、局長などの新ポストが続出。同時にゼネコンやスポーツメーカー、広告代理店などが群がり、同庁から社外取締役や顧問の肩書きで天下る者が急増する可能性も高いのです」
一方、政界でも同じ現象が見受けられるという。
「同庁の副大臣や政務官の多くには、麻生太郎副総理兼財務相が会長を務める『五輪招致議連』の議員らが就くと見られるが、五輪施設の建設や競技ウエアの公認、放映権などが発生する。今ではこの莫大な利権を前に、議員らの鼻息が強まっているのです」(政治部記者)
また、霞が関では現在、文科省が握る「toto」(サッカーくじ)利権も「スポーツ庁に移そうとの声も飛んでいる」(同)とか。まさに同庁の設立は、政官界の焼け太りを招きそうだ。