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三洋の遺産電気自動車にのめり込む パナソニック負の連鎖

 「機を見るに敏なトヨタは保有する株の大半を売却した。そのベンチャー企業と“運命共同体”を決め込んで本当に大丈夫なのか」
 市場関係者がパナソニックに冷ややかな視線を送っている。昨年3月期まで2期連続で7500億円超の大赤字を垂れ流し、今年3月期でやっと黒字(1204億円)を確保したばかりのパナソニックが、病み上がりにムチ打って大バクチに打って出たのだ。

 その“博打”とは、米電気自動車(EV)会社でナスダック市場に上場するテスラモーターズとのタッグである。総額約5000億円を投じて米ネバダ州に世界最大級となるEV向けの電池工場を建設、2017年に稼働し、'20年のフル稼働を目指している。
 パナソニックは国際オリンピック委員会(IOC)と2024年までトップスポンサー契約を結んでおり、このフル稼働で東京五輪開催に花を添えようとの思惑が透けている。津賀一宏社長は今年の3月末、一連のリストラのメドが立ったことから「攻めの経営に転じる」と宣言、2019年3月期('18年度)に売上高10兆円の目標を掲げて住宅関連と自動車関連を家電に次ぐ経営の柱に位置付けた。その延長にあるのがテスラとの共同事業だ。

 EVは「環境にやさしいエコカー」として注目されている。その中核を担うのがリチウムイオン電池で、「EVは原価の半分を電池が占める」とまでいわれている。パナソニックが約7000億円の大枚を投じて三洋電機を買収('08年)したのも、当時の三洋が誇るリチウムイオン電池や太陽電池の高い技術力を取り込む狙いがあった、と言えば話は早い。
 しかし、津賀社長が描くテスラとの二人三脚に不吉な影が兆してきた。冒頭に述べたように、トヨタによるテスラ株売却だ。
 トヨタはテスラと共同開発したスポーツタイプ多目的車『RAV4』のEVをカナダで生産し、既に北米で1300台弱を販売している。ところが株売却を機に、テスラからEV用リチウムイオン電池2500台分の供給を受ける当初の契約を打ち切った。テイよく三くだり半を突き付けた理由は「トヨタがハイブリッド車(HV)の次を、EVではなく燃料電池車(FCV)と位置付けたからだ」と関係者は打ち明ける。

 パナソニックにとって、これは大誤算である。EVを生産するメーカーの中で日産はNECとの共同出資会社から電池を調達している。三菱自動車の調達先は三菱商事やJSユアサとの共同出資会社だ。ところがパナソニック・テスラ連合はトヨタへの供給を最優先に考えてきた。今後、欧米メーカーに猛アタックするにせよ、最大の顧客を逃す損失は計り知れない。
 「厄介なことに、パナとテスラはズブズブの関係になっている。というのもパナは2年前にテスラが発売した高級EVセダン『モデルS』にリチウムイオン電池を供給したのですが、この車が800万円〜1000万円と高額にもかかわらず、米国で人気を呼んでいる。そのため今年度から4年間でテスラに20億本のリチウムイオン電池を供給する契約を結んだように、パナにとってテスラは切っても切れない得意先。テスラだってパナとは一蓮托生ですし、金の成る木と捉えているから新工場の投資マネーの大半を搾り取る魂胆でしょう」(パナソニックOB)

 思えば三洋電機の買収で“ドブ銭7000億円”と揶揄された同社が、その延長に位置付けたEV事業で再びドロ沼にはまりかねないのだから皮肉である。
 これには続きがある。パナはプラズマパネルの工場建設に5000億円を投じてテレビ事業のテコ入れを図った。しかし、この過剰投資から一昨年、昨年と屈辱的な大赤字に塗れたのはご承知の通り。それどころか、今年3月期の黒字達成にしても「ヘルスケア事業を米投資ファンドに1650億円で売却したたまもの。テレビや半導体などで大型リストラを断行したとはいえ、これがなければ最終赤字が避けられず、世間から『V字回復』とヨイショされ、凋落のソニーとの違いをアピールすることもなかった」と証券アナリストは指摘する。

 皮肉は、まだ続く。パナは来年4月、三洋電機の社員7000人を転籍で受け入れ、給与体系を一本化する。これを踏まえて「グループの一体化」をアピールするが、前出のパナOBは喝破する。
 「情け容赦ない苛烈リストラの結果、社員数はピーク時に比べ11万人も減っている。日本の上場企業では最大の人減らしです。これでテスラと心中しようものなら、肩叩きの対象になる社員こそいい面の皮です」

 パナソニックは今期の増収増益を見込んでいるが、テスラ依存度に比例して将来に対する社員の不安も日を追って高まりそうだ。

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