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伝説に登場した海の怪物はクジラの生態によるものだった?海洋考古学者による仮説が注目集める

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 昔から海の中には怪物がいると言い伝えられてきた。人魚やクラーケンといった海に住む怪物たちの伝説は現代の我々にもなじみ深いものだが、本当に怪物じみた生物が生息していたとは考えづらい。むしろ、現代でもよく知られている海の生物、例えばある種のクジラやその生態で説明できるのではないか、と科学者たちが興味深い説を唱えている。

 学術誌Marine Mammal Scienceの2月28日号に掲載された研究によれば、クジラの「トラップフィーディング」と呼ばれる行動を観察することで、昔の船乗りたちが怪物を想像した可能性が高いという。

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 「トラップフィーディング」は2011年に初めて観測されたクジラの行動だ。クジラが水面に口を大きく開けた状態で潜み、仲間のクジラに追い立てられた魚の群れが口の中にやってきたところで急浮上しながら口を閉じ、一気にえさとなる魚を補食するというもの。

 これは「バブルネットフィーディング」などのクジラが群れ単位で行う補食法の一つだ。
 この独特の補食方法が、海に住む巨大な怪物クラーケンなどの伝説を生んだのではないか、とこの研究の主執筆者であるオーストラリア・フリンダース大学の海洋考古学者ジョン・マッカーシー氏は語る。

 「アイスランドの神話を何げなく読んでいたら、『水面でじっとした状態で魚を誘い込み、口をパクッと閉じて閉じ込める』海の怪物についての言及に出くわしました」

 彼が確認した海の怪物は、13世紀のノルウェーの写本に記載がある海の巨大な怪物「ハーヴグーヴァ(hafgufa)」のこと。主にアイスランド付近で目撃されたと伝えられており、「海の蒸気」の意味を持つ。

 非常に巨大で島や岩礁に見えるほどで、様々な方法で大量の魚類をおびき寄せ、ひと飲みにしてしまうという。

 このハーヴグーヴァの補食方法が「自分の吐しゃ物をまきえさにしておびき寄せる」というものもあれば、「口吻(こうふん)部を水上に浮上させた状態で潮目が変わるまでじっとしており、口の中に入ってきた生物を食べる」というものも。この行動が、クジラがトラップフィーディングでえさを食べる様子に酷似しているとマッカーシー氏は判断したのだ。

 「中世の文献の専門家に相談したところ、この2つの概念が関連しているという説を支持するようなデータがどんどん出てきました」とマッカーシー氏は語る。

 その後、彼は中世の文学を研究している他の専門家と議論を重ね、当時の人々は海洋生物の行動をよく観察しており、現代人でも知らなかった生態や行動を伝説という形で記録していたのではないか、という結論に至ったそうだ。

 「クジラの行動については、まだまだ学ぶべきことがたくさんあります。ドローンのような新しい技術を使ってクジラが浮上する際の呼吸を探るなど、現代は海洋生物学においてエキサイティングな時代といえます」とマッカーシー氏は語る。

 今後も海洋生物の新たな生態が分かるにつれて、昔からの言い伝えの真相も明らかになっていくのだろうか。今後が気になるところだ。

山口敏太郎
作家、ライター。著書に「日本怪忌行」「モンスター・幻獣大百科」、テレビ出演「怪談グランプリ」「ビートたけしの超常現象Xファイル」「緊急検証シリーズ」など。
YouTubeにてオカルト番組「アトラスラジオ」放送中

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Scientists say whales could solve mystery of mermaids and kraken sightings(The Daily Star)より
https://www.dailystar.co.uk/news/weird-news/scientists-say-whales-could-solve-29346888

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