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消えた軍隊(2)

 日本の自衛隊はもちろん、多くの国でも軍隊は災害に際して警察や消防とならぶ、あるいはそれ以上に頼もしい存在として登場する。そのイメージからか、怪奇あるいは超自然現象が語られる際には「軍隊さえも対処できない現象」といったアオリに使われることも多く、さらには最も解決困難な現象として軍隊そのものの集団失踪譚もある。

 特によく知られた事例としては、アニメ映画「ドラえもん・のび太の日本誕生」でも劇中で言及された「第一次世界大戦中のトルコで、イギリスのノーフォーク連隊が奇怪な雲に飲み込まれ、あとかたなく姿を消した」とのエピソードがある。この事件は1960年代末から70年代にかけて世界の怪奇現象マニアに広まり、やや遅れて日本でも紹介された。

 当時は1973年に出版された「ノストラダムスの大予言」に端を発する超常現象ブームのまっただ中にあり、このノーフォーク連隊失踪事件はバミューダの謎と合わせて紹介されたこともあって、子供向けの書籍からTVの怪奇特番に至るまでなんども繰り返し取り上げられ、多くの日本人に強烈な印象を残したのである。

 ところが、戦史研究の進展によってノーフォーク連隊失踪事件は単なる戦闘の結果であり、超自然現象はおろか不自然な点すら全くないことが明らかとなった。まず、連隊のすべてが失踪したのではなく、その一部が「戦闘中に」姿を消したこと、それはトルコ軍の待ち伏せ攻撃によって壊滅させられたためであること。そして行方不明となった将兵の遺体が埋葬地から発見され、捕虜となった生存者は戦後にトルコの収容所から帰還していたことなどが明らかとなったのだ。

 近年の調査によって、ノーフォーク連隊失踪事件は当時のイギリス軍司令官が戦闘中に部隊が行方不明となった状況を「ミステリアス」と報告書で表現したことに端を発するであろうと推測され、遅くとも1950年代初めまでには「将兵が奇怪な雲に飲み込まれた」との伝説が成立していたことなどが明らかとなっている。そして、戦いから50年という節目に当たる1965年、将兵が姿を消す様を目の当たりにしたとの証言がメディアで取り上げられ、翌年には超自然現象研究家の著書にも収録されたことが決定打となり、世界へ広まっていったのである。

 今年はノーフォーク連隊失踪(戦闘中行方不明)事件から百年という記念すべき年に当たっており、連隊の退役軍人会や地元の研究者は伝説によらない真実の姿を掘り起こすべく、さまざまな情報を発信している。都市伝説という奇怪な雲に飲み込まれたのは、困難な状況のもとでも勇敢に戦い、そして倒れていった将兵の姿であり、彼らが再び姿を現す日はそう遠くないであろう。

(続く)

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