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丸山和也・参議院議員が政局を斬る! ポスト安倍は誰か

 ――東京都議選での自民党の惨敗は、自滅との見方が根強いです。

 文句なしの負けだね。小池さんの人気は相変わらず高かったものの、選挙戦直前までの世論調査では、投票先が拮抗していて、自民党もそれほど負けないのではないかと言われていた。豊洲移転問題で小池人気にも陰りが見えてきたと囁かれるようになったので、自民党は完全に緩んだね。森友と加計の問題はずっと尾を引いていたが、直前に噴出したスキャンダルが痛かった。豊田真由子の暴言・暴行が出てきて、稲田朋美の失言は法的にも弁解しようがないし、防衛大臣の資質として問題だ。そして、都連会長である下村博文自身のお金の疑惑がダメ押しになった。
 俺も3カ所応援に行ったけど、みな最下位ながら全員当選したよ。お礼の電話が掛かってくると思っていたけど、何の音沙汰もないなぁ(笑)。

 ――豊田氏はすぐに離党届を提出したが、稲田氏については安倍晋三首相が擁護し続けました。

 稲田の場合は、南スーダンの日報問題などでも、以前から管理能力と資質が問題視されていた。国民の多くがそうだし、俺の周りの自民党支持者でさえ「稲田さんは…」と言っていた。「えこひいきの自民党、身内や友だちには優しい安倍さん」そんな評価が定着してしまった。稲田も辞任した方が、彼女自身の政治生命にとってもプラスだったはずだ。内閣改造を控えているとはいえ、こういう雰囲気の中で仕事を続けるのはプラスにならない。記者会見でも死人みたいな顔になっていたね。「このハゲーっ!」の豊田は問題外。埼玉県連のつながりで彼女には何回も会ったことあるけど、あんな一面があるなんて全然知らなかった。バレンタインデーのときにチョコレートをもらったんだけどね(笑)。うちの事務所にいる秘書も、うちに来る前に豊田から「来ないか」とずいぶん誘われたことがあったらしいけど、「行かなくて良かった」と胸をなで下ろしていた(笑)。

 ――今後の政治日程としてまず内閣改造、そして秋の臨時国会、来年以降に解散総選挙といった流れです。

 改造で下村、稲田、萩生田ら安倍さんの側近は表舞台から消えるだろう。でも現在の内閣や執行部にいる“お友だち”が消えても、次の“お友だち”が内閣入りを狙っている。お友だち軍団はたくさんいるので、“お友だちの順番待ち”のような状態だ。安倍さんを中心に同心円で二重三重にお友だちの輪ができていて、自分が呼ばれるのを待っているんだよね。
 近々国会では憲法改正の自民党案を出す予定になっているが、このスケジュールは厳しい。また、改憲には公明党が表向きでブレーキをかけるだろう。そして解散総選挙だが、民進党が弱いから都議選でボロ負けしても政権はすぐには倒れないという安心感がある。だから、大きな執行部批判も起きていない。都議選は突風でやられたという感じだ。今のうちに立て直して、都民ファーストの失点を待っているのかもしれない。衆議院解散はしばらくできないだろう。
 昨年秋、党総裁任期を「連続2期6年」から「連続3期9年」に延長する案を決めたけど、運命的にはあのときが安倍さんのピークだったと俺は見ている。任期を延長したのは東京オリンピック・パラリンピックと憲法改正のため。オリンピックは華々しいイベントだけど中身はないし、むしろ知事が主役。歴史的に重いのは改憲の方だ。

 ――改憲案では、九条の二項を変えずに、三項を付け加えるとしています。

 安倍さんはその方が通りやすいと思っているのだろう。自衛隊の存在を認めることに国民の反対はないのだから、その条文を入れようというわけだ。でも、現実を追認しただけで何も変わりがない。あれは党内右派の議員たちや原則論者からも中途半端だと批判されている。自衛隊じゃなくて「国防軍」にしろと言っている人もいるくらいだ。しかし、安倍さんは珍しいことにソフト路線で行こうとしている。政権維持が念頭にあるのかな。しかし現実的には賢い。

 ――自民党はポスト安倍も考えなければならないです。

 安倍さんが次の総裁選に出ないとなれば、候補はたくさん出てくるのではないか。岸田、石破、野田など4〜5人は出てくる。麻生さんも総理大臣1回目は失敗しているから、やる気満々だろう。第2次安倍内閣発足当初、麻生さんは「次はオレだ」とオフレコ発言をしていたと聞く。最近は「(安倍政権を)支えます」とばかり言っているからいっそう怪しい。麻生派は第2派閥になったからね。毎晩寝る前に1時間身体トレーニングをしているらしいよ。
 石破さんは議員票が取れないから、今のままでは勝てない。前々回は盛り上がったけれども。岸田さんはしっかりしているし、答弁にソツがない。厳しいことを言われても、うまくかわせる。勢力は小さいけど、石破さんより票が集まるかもしれない。政治家として線は太くは見えないが、誠実で人柄はいい。安倍さんみたいに思い込みが強くて突っ走ろうとはしない。自民党はまだまだ人材が豊富だから、安倍さんの出馬の有無にかかわらず、元気のある総裁選を活発にやる方が自民党のためになる。

 ――石破氏には国民からの期待もある程度あるが、自民党内ではいまひとつ人気がないようです。

 一対一で話したときに面白くないんだね。バカとか冗談、調子いいことを一切言わない。議員の中での社交術が下手というのもある。麻生さんとは対局的だ。
 俺は麻生さんと会ったときに「ソーリ、ソーリ」と声を掛けるんだけど、本人も笑って応じてくれるし、盛り上がる。ノリがいいんだよ。石破さんにはそういう冗談を言えない雰囲気がある。真面目な原則論者なんだよ。国民的にはそれなりの待望論もあるんだけど。麻生さんは不真面目とも取れる言動も多いが、難しいことを言わないから得をしている。
 あと、石破さんは自民党を1回離党したから、古い人たちからは裏切り者だと思われている。頭を下げれば別だけど、それもなかなかできない。優柔不断で決断しない人だという評判もある。テレビでは政権批判をしているけど、どこか遠慮がちだ。もっと厳しく言わないと。村上誠一郎くらい激しくやればいいんだよ。そうすれば仲間が増える。総裁任期を改定したときも「どうかと思う」くらいしか言わなかった。慎重過ぎるし、反撃しない。派閥作りも例えは悪いが「小銭を貯めて貯金をしている」みたいなイメージだね。
 やる気なら今こそダイナミックに反乱の狼煙を上げるべきだ。もちろん、強烈な石破叩きが始まるけど、それを乗り越えなければ、永遠に総理の目はないよ。

 ――都民ファーストは国政にも影響を与えそうです。

 中長期的には、都民ファーストが国政進出するかどうかというのが大きい。今回当選した人たちがすぐに国政に出てくることはないだろうけど、それだけの勢力基盤があるわけだから、他の政党からの離党者が集まってきて国政に利用しようと画策を始めるだろう。
 すでに小池に国政進出を促している国会議員もいるようだけれど、焦ると小池自身の首を絞めることになるので下手な話には乗らない方がいい。都政で成果を出して、力をためておくべきだ。小池さんにとって危険なのはそのあたりかな。オリンピックを成功させて、そこでスパッと辞めれば伝説になってカッコイイんだけど、そうもいかないだろうね。
 それにしても、今回の都議選は候補者が政策らしきことを語らなかった。作家の浅田次郎も言ってるが、日本の政治、文化は本質的には娯楽、日本は良くも悪くもいいかげん社会なんだよ。必死で騒ぎはするが、原則的には生命、信条を懸けた真剣さがないんだな。文学でも同じだ。豊田の「ハゲーっ!」の方が面白いから、みんなそっちに飛びついちゃうんだよ(笑)。
(文中敬称略)

丸山和也
1946年兵庫県生まれ。東京を中心に法律事務所を構える。日本テレビ系人気番組「行列のできる法律相談所」レギュラー出演中の2007年、参議院選挙に自民党から出馬し当選。現在2期目。自民党法務部会長、自民党参議院政策審議会副会長、自民党司法制度調査会会長等を歴任。「丸山総合法律事務所」代表。

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