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連載ラノベ 夢ごこち(5)

 吉原君に、急に、話しかけられた。
 「やっぱり、早瀬さん、オカルト的な話が好きなんだね」

 えっ、オカルト?
 「今、うれしそうな顔してたよ」

 ほんとに…、私、そんな顔をしていたんだ。
 それに、もしそうなら、うれしそうな顔をしているところ、吉原君に見られた。
 吉原君、どう思ったんだろう。
 吉原君が目を細めている。ほっぺたも、楽しそう。

 「やっぱり、オカルト、好きなんだね」

 どうしよう。なんだか、恥ずかしい。
 別のことを話したい。
 吉原君に聞いてみた。

 「吉原君は、何が好きなの」

 吉原君のことだから、歴史かな。
 あっ、急にまじめな顔になった。

 「早瀬さんのこと、好きだよ」

 言われちゃった。でも、「好き」って言ってくれたの、初めて。
 うれしい。

 けど、私、こういうとき、どうすればよいのかわからない。
 同級生の人たちなら、かわいらしく笑って、気の利いた言葉を返すのだろうけど、私にはできない。
 黙ったまま、下を向いてしまった。
 土の道のなかで、少し大きめの石が、頭を出している。
 石に落ち葉がつかえている。落ち葉は風に飛ばされて、吉原君の靴に引っかかった。
 落ち葉が、風で揺れている。吉原君の靴を、くすぐっているよう。
 でも、落ち葉って、かさかさしている。手に取って親指と人差し指でつまんだら、ぽろぽろ崩れてしまいそう。
 落ち葉は、靴からも飛ばされて、がけの下へ消えていった。
 静かだ。
 ここには、私と吉原君しかいない。
 吉原君、今、どんな顔をしているのだろう。
 私のことを見て、どう思っているのだろう。
 けど、私、真顔でうつむいちゃったから、吉原君、私が吉原君のことを好きじゃないって、思ったかも。
 吉原君が、せきばらいをした。何か、しゃべる。

 「キスしていい?」

 それで今日は一日、様子がへんだったんだ。
 けど、どうしよう。こういうとき、どうしたらよいのだろう。手をつないだこともないし、それに、まだ昼間だ。
 でも、いやだって言ったら、吉原君に、吉原君のことを好きじゃないのだと思われてしまう。

 風だ。石が笑っているみたい。

(つづく/竹内みちまろ)

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