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元美人女優が愛する男に浮気され、カミソリで股間を切断…「阿部定事件」とは異なる結末【背筋も凍る!女の事件簿】

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 1936年(昭和11年)5月18日、東京の下町で一人の娼婦が愛する男性を殺害し、局部を持ち帰るという「阿部定事件」が発生した。

 「阿部定事件」があまりに有名であるため、他の局部切断事件はどうしても影が薄くなってしまうものの、「阿部定事件」以降でも、女性による局部切断事件は発生している。

 1953年(昭和28年)7月9日、東京都文京区で38歳になる女性が逮捕された。この女性は年齢こそ重ねているものの、切れ長の目で落ち着いた雰囲気を持つ美女で、街を歩けば誰しもが見返すような美貌の持ち主であった。それもそのはず、この女性は10年ほど前まで映画に出演していた元女優だったのだ。

 この女性、芸名を「宮古世里江」といい、16歳の時にチャンバラスターの大河内伝次郎に弟子入り。以来、大河内主演の日活映画『女人曼陀羅』などに端役として出演。しかし、女優としては大成せず、俳優仲間だった男性と結婚。以来、夫婦で移動劇団を作り生活していた。もっとも旅生活はいつまでも続かず、宮古は岩手県釜石市の旅館に落ち着き、女中として働き始めた。ところが、女中として働いている時、宮古は8歳年下の配管工の男性Aと関係を持つに至り、夫とは離婚し、Aと一緒に東京へ引っ越すことになった。

 ところが、宮古の東京での生活も長くは続かなかった。Aは東京へ出てきてすぐ、宮古とは違う別の女性と関係を結んでしまい、なかなか帰ってこなくなってしまった。

 「結婚しようと言っていたのに……」

 Aのことは諦め、早く別の男性を見つけようと思った矢先、酒に酔ったAが突然、宮古の住むアパートへ戻ってきた。Aと宮古は久々の再会後、以前のように情痴の限りを尽くし、一杯のビールを飲むと、Aはその場で寝てしまった。宮古はスヤスヤと眠るAの寝顔を見ていると、「自分が捨てられた」という事実に改めて悲観し、西洋カミソリを手に取り、Aのペニスを「スパッ」と切断してしまったのだ。そして、宮古は切断したペニスを握りしめ、近くのマンホールの中へ捨ててしまったのだ。

 ところが、麻酔もなしにペニスを切ったものなので、Aはあまりの痛さにこの世のものとは思えないうめき声を上げ、苦しんでしまった。宮古は「怒りのあまりとんでもないことしてしまった」とAを介抱。しばらくして、うめき声を聞いたアパートの管理人が病院に電話し、この度の「チン切り事件」が判明したのだ。

 宮古は警察の取り調べに対し、「殺すつもりはなかった」と供述し、また、ペニスを切られたAも「彼女も可哀想な女だった」と語っており、最終的に宮古は起訴猶予処分となり、二人は仲良く帰って行ったという。

 なお、切り取られマンホールに捨てられたAのペニスだが、その後、見つかったかどうかは定かではない。

文:穂積昭雪(山口敏太郎事務所)

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