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大手も参入し始めた 保険業界“隙間商品”知恵比べ

 多様化、複雑化する現代社会において、「かゆいところに手が届くこんな保険が欲しい」、「少額でも保険金があったら助かるのに」という要望も増加。そんな中、契約期間が1年から2年、補償(保障)額も数十万から1000万円限度の少額短期保険、いわゆる「ニッチ保険」のニーズが増えている。
 「いま大ヒットしている少額短期保険商品の中で目立つのは、痴漢冤罪保険です。例えば、スマートフォンを通じ弁護士にSOSを送る『痴漢冤罪ヘルプコール付き弁護士費用保険』。月額590円で、事が発生してから48時間内の弁護士費用が補償されます。契約期間は1年。被害者となった場合の弁護士費用などの保険金は最高300万円です」(全国紙経済部記者)

 この商品を発売する、ジャパン少額短期保険の杉本尚士社長はこう言う。
 「刑事事件を含まない事案や、事故当事者となった場合、弁護士費用、賠償金を負担するもの。通常の法律相談も適用されます」

 この商品の最大の特徴である「ヘルプコール」とは、痴漢に間違われた際、スマホで保険会社提携の当番弁護士にメールが送信され、即座に対応してくれるシステムだ。しかし、本格的に注目され始めたのは今年から。首都圏で痴漢を疑われ線路に逃走する騒動が続出し、5月には東急田園都市線で線路に飛び降りた30代男性が電車に跳ねられ死亡するという事故が発生。これにより、痴漢が大きくクローズアップされたためという。

 高齢者を対象にした短期少額保険商品の開発も活発だ。例えば、家財保険と傷害保険をセットにしたアスモ少額短期保険が提供する「転ばぬ先の杖」。対象者は、有料老人ホームの個室入居者に限り、年間7000円からの保険料で、施設内外のケガ治療で5日以上の入院に対し、一定の金額が支払われるというもの。
 同社担当者は、こう説明する。
 「補償は、エコノミープランなら70歳男性で19万5000円、同女性で16万6000円。80歳男性で9万9000円、同女性6万8000円。火事や水害などでの家財道具被害もセットになっているのもポイントです」

 中高年から高齢者の間では、健康志向も高まり登山もブームだ。それに伴い全国の山岳遭難者も急増しており、2016年は2929人、うち4人に3人は中高年者という割合になっている。そのため山での遭難費用をカバーしてくれる保険も人気を集めている。
 日本費用補償少額短期保険の「レスキュー費用保険」は、年間4000円の保険料で300万円までの補償だ。
 同社の一関重幸社長がこう言う。
 「県警や消防署による山岳遭難救助は、ほとんどが無料です。しかし、民間団体が出動するケースも増えていて、その場合、数十万円単位の費用が発生することもあります。そうしたケースに備え、加入者が増えている。加入した時点から補償が可能になります」

 高齢者にかかわるものでは、他にペットの少額短期保険がある。
 高齢者の間では、「私が長期入院や死んだら、私の愛猫はどうなってしまうのか。殺処分は避けたい」といった不安を抱く、ペットの飼い主が増えている。それに対応すべく、前出のアスモ少額短期保険では、「ペットのお守り」という保険を2年前に売り出した。
 飼い主不在での「老犬ホーム」の入居費用では、年間50万円近い施設もある。そこで飼い主が死亡、または重度障害者のケースで最高300万円を上限に保険金が支払われ、ペットを委託された人はそれを老犬ホームの費用等に充てられる。また、飼い主が入院などの場合も1日5000円の費用が出る。

 一般社団法人日本少額短期保険協会の広報担当者は、少短保険の最新動向をこう答える。
 「保険金の上限が生保で300万円、損保で1000万円までと限定されているので、運営会社の経営リスクも少ない。また、掛け捨て型なので、消費者にとってシンプルでライフスタイルに合ったニッチな商品が多い。それが例えば、コンサートに行けなくなった場合のコンサート代金補償などのユニークな商品を生み、利用者増につながる。ただし、認知度はまだまだで、さらなる努力が必要です」

 加えて、ここへ来て大手企業も、このニッチ保険への参入に動き始めている。
 「少額短期保険会社は、最低資本金1000万円で設立できるため、今後も隙間を狙った保険会社は増え続けるでしょう。ただし、それに目をつけた大手企業、例えば、東京海上火災HDも少額短期保険会社を設立し、イオンや丸井グループも参入している。今後、ますますこの分野は知恵の絞り合いで熱くなりそうです」(保険業界関係者)

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