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創業家・盛田家復権と勲章 テニス錦織圭にすがる凋落ソニーの待ったなし

 テニスの全米オープンで錦織圭選手が大活躍、準優勝を果たした。その裏で存在感を見せつけたのがソニー創業一族である。

 2001年に全国小学生テニス大会で優勝した錦織少年は、13歳で米フロリダ州のIMGニック・ボロテリー・テニスアカデミーに留学した。その費用を負担して全面的に支援したのが『盛田正明テニス・ファンド』を率いる盛田正明・元ソニー副社長(日本テニス協会名誉会長)だ。ソニーの共同創業者だった故・盛田昭夫元社長の末弟である。
 テニス協会の会長だった2000年に私財を投じてファンドを設立、世界的プレーヤーの輩出を目指したもののハードルは高く、錦織選手の活躍で先行投資がやっと実を結びつつある。
 米国までの往復渡航費やアカデミーの費用、遠征費、現地学校の学費など“盛田ファンド”が丸抱え負担するため、ファンドの運用資金は年間数千万円規模に達する。よほどの熱意がなければできないだけに、市場関係者は「ソニー創業一族にとっては久々の朗報」とはやしたてる。

 無理もない。ソニー自体は既に堂々たる“負け組”の烙印を押されている。そこへ追い打ちをかけるように、昨年暮れには盛田昭夫氏の長男である英夫氏による“放蕩三昧”から、文部科学省所管の鈴渓学術財団(東京)と愛知県教育委員会所管の盛田国際教育振興財団(名古屋市)が解散に追い込まれた。
 「父親から双方の理事長を相続した英夫さんが、基本財産の大半を自分のファミリー会社に貸し付けて大穴を開けたのが原因です。ただ、彼の暴走は今に始まったことじゃない。スキー場やF1ビジネスにも手を染めたのですが、結局は大損を抱え込み、一族の資産管理会社レイケイが保有していたソニー株の売却処分を余儀なくされた。それが度重なった結果、ソニーの大株主だったレイケイは保有株を全て叩き売り、彼の尻拭いをする羽目になったのです」(ソニーウオッチャー)
 今日の錦織選手を育てた正明氏による盛田ファンドとのギャップは大きい。道理で市場関係者が「久々の朗報」と褒めそやすわけだ。

 そのタイミングに合わせたかのように、今度はソニーが家庭用ゲーム機『プレイステーション4(PS4)』の立て直しに向け、創業一族に白羽の矢を立てた。子会社のソニーコンピュータエンタテインメント(SCE)が9月1日付でアジア事業を統括するSCEジャパンアジアの社長に盛田厚取締役が就いたのだ。
 同氏はソニー特別社友でもある盛田和昭・盛田エンタプライズ会長の二男で、故・昭夫氏や正明氏のおい。前述した“不肖の御曹司”こと英夫氏の従兄弟に当たる。ただ、創業一族といっても父親の和昭氏が兄の昭夫氏に代わって実家の造り酒屋を引き継いだように、現実には傍流の出身。ソニーの英国法人などを経て2006年にSCEへ移って取締役となり、経営管理を歩んできた経歴を持つ。

 しかし、前任者の河野弘社長が「平井一夫ソニー社長とはツーカーの仲で、ゲーム業界でも知名度が高かった」(情報筋)のに対し、無名に近い厚氏を担ぎ出した狙いは何か。前出のウオッチャーは冷ややかだ。
 「去年の11月に欧米で先行販売したPS4は既に累計で1000万台突破と快調なのですが、今年の2月に投入した国内に限れば絶不調で『100万台突破は夢の夢』と陰口されている。そこでトップ交代を機にPS4の販売をテコ入れすべく、年末商戦に向けて新作ゲームソフトを34作投入するのですが、大半は“人殺しゲーム”。どこまでヒットするかは怪しい限りで、口さがない向きなど『平井さんは“ポン友”の河野さんの将来を傷付けたくないから厚さんを修羅場に担ぎ出したのではないか』と言っている。反面、ここで実績を上げればソニー復活をアピールできるため、厚さんが“次の次”のソニー社長に就く道が開ける。早い話、平井社長は厚さんに“餌”を投げたのです」

 とはいえ、今のソニーは苛烈リストラと揶揄される人減らし策を通り越している。何せ、旧本社ビルを住友不動産に161億円で売却したばかりか、本社の土地もソニー生命に528億円で売却した。昨年はニューヨーク本社ビルやソニーシティ大崎ビルなどを相次いで売却、2000億円を超える資産売却益を手にしたものの、まだ赤字疑獄から脱却できていない。
 そんな“病めるソニー”の復活を創業一族に託そうとすること自体「とんだお笑い草だ」とソニーOBは苦笑する。しかし、このままだとソニーのジリ貧地獄は止まらない。
 今年3月期の役員報酬が、赤字企業としては破格の1億8400万円だった平井社長が“セコイ延命”を画策するようでは、ソニーの前途は多難である。

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