2008年にホンダがリコールし、翌'09年にアメリカで初の関連死亡事故が発生してから8年。「あのタカタがつぶれるわけがない」と、最初の事故の一報の際は誰もが思った大企業が、あっけなく崩れ去った。その要因として、経営者側の危機意識の低さ、関係各社との甘えの構造、消費者意識の非共有など、さまざまな指摘がなされているが、一番の大きな理由は多くの日本企業が陥っていた“驕り”ではなかろうか。
タカタのエアバッグは世界中の自動車メーカーに採用されており、そのシェアは世界の販売台数の2割とも言われる。その結果、リコール台数は世界中で1億台を超え、費用総額は1兆3000億円にも上る。
「事故の初期対応さえ間違っていなければ、ここまで事は大きくならなかった。オーナー企業としての弊害がはっきり出てしまった悪い例」(経済アナリスト)
オーナー企業の悪しき習性は、同社の再生手法についても足を引っ張った。取引先の自走車メーカー各社が法的整理による速やかな再生を求めたのに対し、創業家は経営陣として残ることを重視し、私的整理を求め、再生のスピードを遅らせた。そんな状況を見透かすように最終的にタカタのスポンサーとなったのが、中国・寧波均勝電子傘下の米自動車部品メーカー、キー・セーフティ・システムズだ。つまり、実質、中国企業に買収されることになる。
中国による日本の技術の買収は着実に、かつ予想以上に早く進んでいる。中国の自動車メーカーの生産台数が、トヨタやフォルクスワーゲンを上回る日が10年以内にやってくる可能性も否定できない、と発表しているシンクタンクもある。
日本の製造業は、中国に狙い澄まされている。東芝もそうだが、今が正念場なのかもしれない。