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“ブラック”呼ばわりされたすき家の深刻 〜アルバイトの造反で馬脚〜

 ゼンショーホールディングス(HD)傘下の牛丼チェーン、すき家が騒々しい。3月半ばから店舗閉鎖が相次ぎ、インターネットで「これぞブラック企業の典型」と言わんばかりの書き込みが溢れている。それも会社とのギクシャクした関係を物語るかのように、現場の最前線からの造反ラッシュなのだ。
 イワク「関西の某店舗だけど3月15日に3人同時に辞めることにした」「みんな辞めるなら俺も辞めたい。ヘルプ来なくなったら、ますます死ぬな」「一気に離脱者が出ればゼンショーも少しは反省するのではないか。辞めるなら同じ店舗の何人かで同時がいいと思う」などとアルバイト組の“総決起”を促す。これを踏まえて店舗閉鎖の写真がアップされ、手書きした「人員不足のため店舗を一時閉店させていただきます」ウンヌンの貼り紙が躍る。ネットの書き込みに始まった造反が、ここまで“成果”を上げたのは極めて珍しい。

 折も折、3月22日付日本経済新聞が「すき家、半数の1000店改装」と報じた。親会社のゼンショーHDは公募増資で267億円を調達したばかり。そこで2016年春までの2年間に約50億円を投じて約2000店あるすき家店舗のうち1000店舗を改装し、厨房の改良などで商品を迅速に提供する体制を整えるというのである。
 しかし市場関係者は「改装ならば店舗は一時閉鎖する。プライド高いゼンショーのこと、スタッフの造反ラッシュで店舗閉鎖に追い込まれたとは認めたくない。そこで改装を強調すべく、日経にリークしたのだろう」と突き放す。
 それにしても、すき家店舗で勃発した“クーデター”の背景には何があったのか。ネット上には、まことしやかな噂が飛び交った。

 同社は吉野家が昨年暮れから始めて人気を呼んでいる『牛すき鍋膳』に対抗すべく、今年の2月14日から『牛すき鍋定食』を始めた。ところが、この提供に手間が掛かって多忙を極め、牛丼など他の商品になかなか手が回らず「忙しすぎてやっていられない」「もう辞めたい」などの書き込みが溢れ、これが店舗閉鎖につながったことから「人手不足の元凶は鍋定食」との見方が一気に広まった。
 そんなさなかの3月28日、すき家は『牛すき鍋定食』などを4月1日午前9時で“一時終売する”と発表したから、さあ大変。ネットどころか、株式市場にも「だからこそ、すき家はついにお騒がせの元凶を打ち切った」との観測が飛び交ったのである。
 タネ明かしをすれば、3月末での打ち切りは2月の投入時に決まっていたことだ。しかし大騒動の渦中、それもギリギリの段階で“終売”という耳慣れない表現で“撤退”を発表したことから憶測を呼んだのは否めない。

 とはいえ、これで「店舗スタッフの“集団脱走”が打ち止めになる」と思っている関係者は皆無に等しい。
 「すき家の店舗では労働1時間当たりの売上高を意味する『労時売上』が優先され、平均で1時間当たり5000円に届かなければ後で給与をカットされるトンデモないシステムがまかり通っている。実際の労働時間よりも労時売上のつじつま合わせに重きを置くため、サービス残業は当然。“強盗御用達”と陰口され、警察が是正を求めた深夜の1人勤務が解消されないのも、1時間5000円の売り上げがなければスタッフは1人しか使えない“独自ルール”があるからといわれています」(関係者の1人)

 だからこそ、すき家に対するネット上の書き込みは容赦ない。例えば「すき家をはじめとしたゼンショーグループで働いている皆さん、今までのご自身の労働データを持って即刻全員で店をやめて下さい。ご自身の体が壊れる前に。壊れてからでは遅すぎます」「最近、すき家でバイトを始めたのですが、残業代不払いはホントです。22時上がりなのに帰れるのはいつも0時です。当然ですが、残業代は発生しません。いろいろと嫌な思いをしたので近いうちに辞めます」という具合。
 匿名の書き込みという点を割り引いても、最前線の冷え切った空気が伝わってくる。

 そんな声にゼンショーHDを率いる小川賢太郎社長が、どこまで謙虚に耳を傾けるかとなると怪しくなってくる。野心家の同社長は積極果敢なM&Aを展開し、今やスーパー、ファミレス、ステーキ店などを次々と傘下に収め、昨年の報酬額1億2700万円のリッチマンである。すき家版“残酷物語”とのギャップは、嫌でも突出する。
 それだけに、堂々たる“ブラック企業”の烙印を押されたすき家が深刻な人手不足に陥るようだと、王国の前途に赤信号が点滅する。その同社とは対照的に、閉鎖ラッシュと距離を置く吉野家に対して市場の評価が高まっているのは、何やら暗示的だ。

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