これはあるAV女優に聞いた話だが、最近のアニメコスプレものAVにはちゃんと“リハ”があるらしい。「コスプレとかやってみたいと前から思っていたので軽い気持ちで出演のオファーを受けたんですけど、スタジオ入ったら原作アニメの本編見せられて、監督から細かい演技指導があってびっくりしました」(AV女優)。確かに最近のアニメコスプレものAVは原作の再現度がハンパじゃない。もはやパロディーというよりカラミのシーン以外は完全実写化といってもいいほどだ。取材にいったあるアダルト雑誌編集者は「凄いこだわりですよ、カラミにはNG出さないくせに、エキストラの叫び声が気に入らないとNG出して、取り直しましたからねぇ」と驚きを語っていた。
そして更に驚くべきことに、最近は通常パートに一日、カラミシーンに一日の合計二日撮りが主流になりつつあるらしい。最近はAVの売り上げ落ち込みで、安いスタジオやホテルで一日撮りする作品が多い中これは異例の事だ。これだけ資金を掛けてもこのジャンル作品の売上げは好調らしい。完成度上げれば上げるほど売れるとの事だ。
そしてこのジャンルの質の高さを上げている要因として、AV監督の実力の高さも忘れてはならない。
AV業界は、月に数百本と膨大な数の作品が出ているため、邦画やVシネマではなかなか監督というものにはなれないのに比べると、比較的若いうち簡単に監督になれたりする。他の映像業界と違い、かなり早い時期から経験を積めるというメリットがある。また、比較的自由度も高いので、情熱さえあれば自分の思い通りの作品作りができる。ちょうどひと昔前のピンク映画界に似ているかもしれない。『片腕マシンガール』や『ロボゲイシャ』でコアな人気を博している映画監督、井口昇もAV業界出身である。映像作りに関しては、最近のAVはエロ作品だからと馬鹿にできないほどの実力者がゴロゴロしている。さらにヲタクな監督や企画担当も多く、作品テーマにアニメ扱うということに抵抗感が無い。むしろ積極的に取り組んでいるといってもいい。
筆者もあるAVメーカーに取材に行った時、アニヲタの広報に数時間に渡り最近のアニメに関して熱く語られた経験がる。その時はビックリしたものだ。企画会議も真剣そのもので、「○○タンはこういう性格だから、このモデルが近い」とか「これじゃギャルっぽいからもっと普通になるように髪を黒く染めなおしてもらわないとダメだ!」とか、どうすれば本物に近づけるかかなり真面目に論議が交わされていた。
進化の止まらないアニメコスプレものAV。それには支えているスタッフ達の強い情熱がこもっている。(斎藤雅道)