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ついに年金積立金を人質… アベノミクスの大博打!

 捨て身の株価つり上げ作戦が吉と出るか、凶と出るか−−。公的年金の積立金を運用する『年金積立金管理運用独立行政法人』(GPIF)の運用資産見直しに賛否両論が渦巻いている。
 当初、GPIFは年内に見直す意向だったが、安倍政権の強い意向をくんで早ければ9月末にも見直す。狙いはズバリ、株式の運用比率を高め、株価を大きく押し上げることだ。株価上昇に伴い、個人消費が拡大すれば、消費税を10%に引き上げた後も景気の持続的拡大が続くと期待を込めてのことである。

 何せGPIFの運用マネーは126兆5771億円(今年3月末)と世界最大。運用の基本となる目標値は国内債60%、国内株12%(他は外債など)だが、3月末時点では国内債55.43%(70兆1617億円)、国内株16.47%(20兆8472億円)の比率で運用されている。安倍政権はさらにこれを見直し、国内債の比率を下げる一方、国内株を大幅に増やす計画だ。
 「動きが慌ただしくなったのは最近ですが、去年の秋には有識者会議が“脱国債”を提言し、4月には厚生労働省がGPIFの運用委員を刷新、国内株投資の積極論者が名を連ねた。その時点で安倍政権が正面突破を図ろうとしたのは間違いありません」(経済記者)

 外堀が埋まったと確信したのか、厚労相とともに認可の権限を持つ麻生太郎副総理兼財務相は6月6日、閣議後の記者会見で「仮に10%動いたら13兆円。これだけ動いたら日本で動いている(民間の)ファンドとはケタが違う」と言い放った。

 アベノミクスへの期待から海外投資家は昨年、日本株を15兆円買い越した。それに匹敵する巨額マネーが簡単に創出できるのだ。麻生財務相が“取らぬタヌキ”にニンマリしたのも無理はない。とはいえ、リーマンショックやバブル崩壊に象徴されるように、株価には暴落リスクが潜んでいる。巨額の損失から支給される年金の大幅目減り、下手すると“無年金”が現実味を増す。それを承知で、なぜ前のめりになるのか。
 「安倍政権は『株価連動政権』と揶揄されるほど株価上昇が政権安泰の絶対条件と信じている。これは株価が低迷すればアベノミクスが失速し、政権が吹き飛ぶとの危機感の裏返しに他なりません。だから高株価演出のためには手段を問わないのですが、これには当然リスクを伴う。そのため与党内にも慎重論は根強いのですが、安倍首相や周辺は聞く耳など持たないのです」(永田町関係者)

 皮肉なことに、客観情勢も安倍政権の“株価引き上げシフト”を後押しする。先に発表した4〜6月期の国内総生産(GDP)は消費増税による駆け込み需要の反動から年率換算で前期比6.8%減に落ち込んだ。「想定の範囲内」と好意的に解釈する向きもいるが、アベノミクス崩壊の序章にならないとも限らない。
 デパートの売上高は7月まで4カ月連続で前年割れが続き、消費増税後の反動減が長引いている。追い打ちをかけるように、台風や集中豪雨などの天候不順が景気の足を引っ張っている。これが年末に迫った消費税10%引き上げ論議に影響するのは必至で、エコノミストは「もし来年10月からの消費税引き上げを見送れば、欧米のヘッジファンドは日本政府が財政再建に消極的とみなし、国債の売り崩しを仕掛ける」と警告する。言い換えれば、だからこそ安倍政権は年金マネーの株式市場投入に活路を求めようとしており、「一部にはGPIFが運用するマネーの30%(約38兆円)を株式投資に振り向けるべし、との強硬論もある」と情報筋は打ち明ける。

 実は政府が画策する公的マネーの市場投入には“続き”がある。公務員が加入する国家公務員共済組合連合会と地方公務員共済組合連合会、さらには日本私立学校振興・共済事業団の主要3共済の運用マネー総額30兆円が、GPIFに追随の動きを見せていることだ。
 さらに総額21兆円を運用する地方自治体の共済年金も追随する構え。これがそろい踏みすれば50兆円を超える資金が株式市場につぎ込まれる。そんな動きを踏まえて証券アナリストは「GPIFマネーの拡大投入は他の資金を大量に取り込むための小道具みたいなものだ」と舌を巻く。これが奏功すればともかく、もしバブル崩壊の二の舞いに直面すれば年金生活者は路頭に迷う。現役世代も過去に払った分が戻らず、退職後の無収入が現実味を増す。まさに“大バクチ”なのだ。
 しかし政府はシタタカで、来年度予算に景気対策として1兆円の予備費を盛り込む。消費税を10%に上げた際の影響を極力抑えると言えば聞こえはいいが、その前提が年金マネーの積極投入による株価上昇だ。

 年金を人質に取った安倍政権の行く手に、バブル崩壊による“失われた10年”が重なって見えてくる。

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