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元厚生次官連続テロ事件 犯行声明ナゼ出ない?

 元厚生事務次官宅が相次いで襲撃され3人が死傷した連続テロ事件で、警視庁と埼玉県警は共同捜査本部を立ち上げ、犯人特定を急いでいる。しかし、22日までに逮捕に結び付く有力な手掛かりは得られず、捜査は難航。単独犯か複数犯か? 第3の凶行はあるのか? 「犯行声明を出せない理由」が事件解決のカギを握っている可能性がある。

 「旧厚生省の歴代事務方トップを2日連続で狙い、宅配便を装う手口や刃物を使った犯行態様なども同じ。これだけ関連性をうかがわせながら、まだ同一犯と断定しきれないのは、一向に“あるべきはず”の犯行声明が出ないからだ。これが捜査方針をかく乱させているのは間違いない」(警視庁詰め記者)
 17日、埼玉県さいたま市で元厚生事務次官の山口剛彦さん(66)、美和子さん(61)夫妻宅を襲った犯人は、刃渡り約20センチと大ぶりの刃物で2人を殺害。翌18日には、東京都中野区にある元同次官の吉原健二さん(76)宅で、応対した妻・靖子さん(72)をやはり刃先の長い刃物で刺して重傷を負わせた。

 2件連続した時点で、「厚生事務次官経験者」が狙われたという共通項が浮上。手口がきわめて似ていることから同一犯の線が濃くなり、第3の犯行を警戒して厚生労働省はパニック状態に陥っている。なんらかの政治思想を持つ組織による犯行とみられたが、これ以降、犯人の動きはパタリと止まった。靖子さんの目撃証言から、2件目の実行犯は30〜40歳代の男と分かっている。
 官僚国家ニッポンで事務方トップ経験者が立て続けに殺傷された事件は、関係各所に大きな衝撃を与えた。報道では「テロ」の文言が躍ったが、日を追うごとに慎重なスタンスに移行している。
 「当初は、国家転覆を図る過激なグループによる組織的犯行とみられていた。左派系団体は大抵、凶器に鉄パイプを使うため、右翼やセクト(派生団体)、カルト教団がマークされたが、実行犯がどこかの組織に属しているなら犯行を誇示したいはず。ところが肝心の犯行声明はいまだにないからどうも、違うようだ。単独犯ではないか」(公安筋)
 事件の背景を探るほど、今回の凶行には不可思議な点が多いことに気付く。中曽根政権で年金制度改革がなされた1985年当時、吉原さんは厚生省年金局長を務めており、山口さんは同局年金課長だった。翌年から始まった基礎年金制度の創設に奔走した“師弟コンビ”である。前出の記者は「制度を恨んでの犯行ならば、なぜ今なのか。しかも政治家ではなく、官僚として評判も悪くない2人を狙ったのはなぜか」と疑問を口にする。
 現職の舛添要一厚労相や当時の小泉純一郎厚生相に比べれば、警護面では犯行計画を立てやすかったに違いない。しかし、だからといって20年も昔の担当者を狙うだろうか。現時点で犯行動機は不明であり、「制度に恨みを持つ者」が犯人像の一例に挙げられているにすぎない。おぼろげながらメッセージ性を感じさせつつ、その実、判然としない。つまり、犯行の結果がだれにも分かるようなダイレクトなメッセージになっていないのである。まして何らかの思想信条に基づく犯行であれば、どこかで“天誅”の理由を明かさなければ意味がなくなる。
 前出の記者は、あくまでも可能性のひとつとして「犯人は犯行声明を出さないのではなく、出せないのではないか」とみる。
 「犯行声明を『出せない』のだとすれば、犯人像はある程度絞り込める。たとえば、犯行は特定の人物にだけ分かる警告であって、一般に知られては都合の悪い場合。暗に『次はオマエだ』と脅すことで何らかの利益を得ようとしていることなどが考えられる。もうひとつは口封じ。犯行声明を出すことが、動機解明や犯人像に結び付いてしまい、墓穴を掘る形になってしまう」(同記者)
 犯行声明がないことが“沈黙のメッセージ”なのか。一刻も早い犯人逮捕が待たれる。

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