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偶然と必然

 死神が仕事をやり損ねる。そんなことがあるのだろうか。リベンジするべく同じ状況が再現される。シンクロニシティ ‐意味ある偶然の一致‐ 当人たちにとっては偶然でも、死神にしてみれば必然なのだ。

 バミューダのとある路上。二人乗りしていた兄弟のバイクと、客一人を乗せたタクシーの衝突事故が起きた。幸い、命を落とした者はいなかった。
 一年後。その日も兄弟はバイクの二人乗りを楽しんでいた。一方、タクシーの運転手は客を求めて走っていた。と、少し前方で手が挙がった。客である。しかし、先に別のタクシーが走っており、拾われてしまった。仕方なくそのまま走っていると、再び手が挙がった。今度は、自分以外のタクシーは無い。路肩にタクシーを寄せ、ようやく客を拾うことができた。しかし、行き先を尋ねても返事が無い。もう一度尋ねながら振り返ると、驚いた表情を浮かべた男が座っていた。そして運転手もまた、驚いた。一年前の衝突事故の時に乗せていた客だった。双方、苦い記憶が蘇る。ようやく客は行き先を告げ、タクシーは走り出したが、どうしても衝突事故現場を通らざるを得ない。気まずい空気が流れる。間もなく件の場所に差しかかるというその時、客が声をあげた。前方から衝突事故の相手であるバイクの兄弟が、こちらに向かってまっすぐ突っ込んできた。その瞬間、各人の心に飛来した思いは何だったのか。まるで見えない力に引き寄せられるように、再び両者は衝突した。

 同じ場所、同じ人たちが一年前の衝突事故を再現した。だが、結果まで同じとはならなかった。バイクの兄弟は揃って死亡してしまったからだ。

七海かりん(山口敏太郎事務所)

山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou/

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