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怪談作家・呪淋陀(じゅりんだ)の「怪談:マスク」

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画像はイメージです。

 T君が小学校3年生の頃だったという。
 町内会のお祭りでお化け屋敷をすることになり、T君は小道具の係に選ばれてしまった。
 T君はさて、どんな物を作ろうかと悩みながら歩いていると、ちょうど公園の前を通りかかった。

 ゴミ捨て場にデパートの紙袋がぽつんと置かれていた。なぜか気になったT君が紙袋を覗いてみると、驚いたことに、中にはフランケンシュタインのゴム製のマスクが入っていた。パーティーなどに使う仮装用のものなのだろう。頭にはナイロンの髪が貼りつき、顔面に斜めに走る縫い傷、首からはネジが突き出て、口からは赤い血が滴り落ちていた。凄くリアルだった。これを被って脅かせば、きっと皆とても驚くだろう。さっそくT君は喜んでマスクを持ち帰った。

 その日は、ちょうどT君の家に、近所の友達がお化け屋敷の準備で集まっていた。皆でお菓子を食べながら、衣装を縫ったり、お化けの面や段ボールでお墓などを作っていた。
 しばらくするとどこからともなく、
 「おぉ〜い、おぉ〜い」
 という男の低い声がした。最初は外で酔っ払いが叫んでいるのかと思ったが、どうも外から聞こえてきている感じではなかった。そのうち、声は段々と近くなり、やがて隣の部屋から聞こえてきた。T君は思い切って友達といっしょに隣の部屋の襖を開けた。しかしその途端、声はぱたりとやんだ。部屋の中にはフランケンシュタインのマスクが入った紙袋があったが、特に変わったこともなかった。

 やがて友達は帰った。T君は一人で後片付けをしていた。
 「ガサリ…」
 隣の部屋で物音がした。T君は襖を開けた。
 マスクが入っている紙袋が倒れ、中からはみ出たフランケンシュタインの顔がこっちを向いてた。
 一瞬、マスクに生々しい眼球が現われ、ぎょろっと動いた。
 T君はすぐに、元のあった場所に戻してきたという。

(怪談作家 呪淋陀(じゅりんだ)山口敏太郎事務所)

参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou

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