アイドル業界の第一線を走り続けてきたHello! Project。その未来を担うのが「ハロプロ研修生」だ。2004年に「ハロプロエッグ」として誕生。2011年の「ハロプロ研修生」への改称を経て、現在までに数多くのハロプロ正規メンバーを輩出してきた。
現役メンバーを見るだけでも、モーニング娘。'16にはリーダーの譜久村聖を筆頭に5人(12人中)、アンジュルムには和田彩花をはじめ6人(9人中)、Juice=Juiceには宮本佳林など4人(5人中)、カントリー・ガールズに4人(7人中)、こぶしファクトリーは8人全員がハロプロ研修生(ハロプロエッグ)出身。ハロプロ研修生内ユニットとしてメジャーデビューが待たれるつばきファクトリーも、6人全員が現役ハロプロ研修生だ。ハロー!プロジェクト・キッズから誕生した現在5人組℃-uteを除き、全グループに「元(現役)研修生」が所属。全体では、つばきファクトリーを含めたハロプロメンバー52人中33人、実に6割を占めていることになる。
もちろん、人数だけではない。研修期間を経て正規グループのメンバーに選ばれただけあり、元研修生には、いわゆる「スキルメン」が多い。まさしく現在のハロー!プロジェクトの核であり、パフォーマンスの屋台骨となっているのが、彼女たちなのだ。
それだけに、現役研修生たちの実力や可能性が生で見られる定期公演「ハロプロ研修生 発表会」(旧新人公演)や、バックダンサーとしての先輩グループのツアー帯同などにはハロプロファンの熱い視線が集まる。そのなかでも、「未来のハロプロ」を占うという意味で特に注目されるのが、2013年からスタートした「春の公開実力診断テスト」だ。
日頃の発表会では、数人のユニットや全員によるグループパフォーマンスが中心で、ソロの大役を任される者はごく一部。一人ひとりの力をつぶさに見ることは難しい。公開実力診断テストでは、研修生メンバーがひとりずつパフォーマンスを披露。真の実力が明らかになるのはもちろんだが、「大勢のなかのひとり」のときには見つけられなかった魅力の“種”を発見することも多い。
研修生たちは、自分で選んだ衣装を身にまとい、自分で選んだ楽曲で勝負する。単なるファッションセンスや楽曲の好みだけではなく、自分の魅力をより引き出す「セルフプロデュース」の力も試されているのだ。現時点の実力に合わないバラードなどをチョイスするよりは、アップテンポなアイドルソングで元気さをアピールした方が好印象を与える場合もある。
公開実力診断テストの最大の特徴は、タイトル通り、客席のファン一人ひとりにも研修生のパフォーマンスや将来性を評価する機会が与えられている点だ。来場者にはひとり一票ずつの投票権が与えられ、テストに参加した研修生全員のパフォーマンス終了後、会場内に設置された投票箱に自ら選んだメンバーの名前を投じていく。
長いハロプロの歴史を振り返れば、「なぜ、この子をオーディションで落としたんだ!?」「彼女はモーニング娘。に欲しかった!!」というリクルーティングに関する不満の声は少なくない。ファンにとっては自分たちの生の声を運営サイドに届けるチャンスとなり、事務所側にとってもユーザーの不満に対応し、最新のニーズを吸い上げる場となるわけだ。
元々は、事務所内部で行っていた研修生の実力診断テストを「公開」にして、今年で4回目。2016年にファンの投票を最も集めた「ベストパフォーマンス賞」に輝いたのは、笠原桃菜と清野桃々姫のふたり。得票数はともに228票、史上初の2名の同時受賞となった。
笠原は2015年の4月に加入、清野にいたっては今年の1月に研修生になったばかり。2012年に加入したメンバーもいるなかでは、まさしく「タマゴ」の状態。当然ながら、歌、ダンスともに拙い点も多い。観客の多くが、歌やダンスの実力だけでなく、表情や雰囲気、ビジュアルのポテンシャルなどに注目しているのがよく分かる結果となった。確かに、その分野のプロの審査員がいる以上、素人であるファンが歌やダンスを採点しても、大きな意味はないのかもしれない。運営陣とは別の視点で「アイドル」の可能性を見るからこそ、ファンの「一票」に価値が生まれるとも言える。
しかしながら、ファンに最も評価されているから即デビューに繋がるかと言えば、それほど簡単な話ではない。事実、過去3回の公開診断テストで 田辺奈菜美(2013年)、段原瑠々(2014年)、加賀楓(2015年)は、いずれもデビューには至っていない。一方、2013年に審査員特別賞を受賞した和田桜子、2014年の審査員特別賞受賞者である田口夏実、浜浦彩乃、佐々木莉佳子、2015年の同賞を獲得した船木結らが、現在、アンジュルムやカントリー・ガールズ、こぶしファクトリーでそれぞれ活躍しているのは、ある意味で対照的だ。
ファンに選ばれた研修生は、デビューできない!? ジンクスとも言える過去の歴史を、笠原桃菜と清野桃々姫の「桃」コンビには、ぜひとも覆して欲しいものだ。
【リアルライブ・コラム連載「アイドル超理論」第29回】
*画像は清野桃々姫ツイッター