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『STEEL BALL RUN』第24巻、主人公とラスボスの立ち位置が逆転

 荒木飛呂彦の漫画作品『STEEL BALL RUN』第24巻が、6月3日発売の第24巻で完結した。バトル漫画のセオリーから外れた最終決戦の展開と予想外の結末が人間ドラマを深くした。

 『STEEL BALL RUN』は『週刊少年ジャンプ』及び『ウルトラジャンプ』で連載された作品で、人気シリーズ『ジョジョの奇妙な冒険』のPart7に位置付けられる。『ジョジョの奇妙な冒険』は、「ジョジョ」の愛称を持つ主人公が強大な敵と戦うアドベンチャーである。Part1からPart6までは、19世紀末英国の貴族ジョナサン・ジョースターと、その子孫が主人公とするジョースター家の物語であった。これに対して『STEEL BALL RUN』は独立した物語で、キャラクターもストーリーも前作とは連動していない。『STEEL BALL RUN』は、ジョジョ(ジョニィ・ジョースター)やディオ(ディエゴ・ブランドー)ら前作のキャラクター設定を利用し、スタンドも登場する。パラレルワールドの『ジョジョの奇妙な冒険』である。

 そして『STEEL BALL RUN』では、19世紀末の米国を舞台に乗馬による大陸横断レース「スティール・ボール・ラン」が描かれる。サンディエゴからニューヨークまでの過酷なレースに、聖人の遺体を集める大統領ファニー・ヴァレンタインとの過酷な戦いが繰り広げられる。前巻では主人公ジョニィが激闘の末に大統領を倒したものの、大統領が並行世界から連れてきたディオに遺体を奪われてしまう。

 この巻ではニューヨークでの最終レースを舞台にジョニィとディオの最終決戦が行われた。並行世界から来たディオのスタンドは「THE WORLD」で、時間を止める能力を持つ。これはPart3「スターダストクルセイダース」のディオのスタンドと同じである。ジョジョとディオの因縁の対決が『STEEL BALL RUN』でも展開された。

 最終決戦では互いに相手の裏を読み、策略を駆使する攻防が続いた。物理的な戦闘と心理的な駆け引きの両者が備わった名勝負になった。バトル漫画は相対的に非力だった主人公が強大な敵を打ち破る定番である。Part3の最終決戦も、主人公の空条承太郎が時間を止めるという圧倒的な能力を有するDIOをどうやって倒すかという戦いであった。

 これに対して『STEEL BALL RUN』の最終決戦では、主人公とラスボスの立ち位置が逆転している。主人公のジョニィの能力「無限の回転」が圧倒的な能力として描かれている。反対にディオの時間を止める能力は5秒間までという制約が強調されている。ディオは「無限の回転」を警戒し、ジョニィを乗り越えなくてはならない最大の試練と考える。そしてジョニィを倒すためには自分の犠牲も必要と覚悟する。これは一般的なバトル漫画における主人公側のキャラの心理である。

 『ジョジョの奇妙な冒険』全編を通して、ディオは単なる悪役以上の印象的なキャラクターであった。『STEEL BALL RUN』では目的は悪であるとしても、主人公サイドのキャラクターにも通用するディオの高貴な覚悟が描かれた。

(林田力)

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