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【雅道のサブカル見聞録】アニメ雑誌以外の“アニメ作品表紙”から見えてくるもの

 今年の4月からTBS系列局で第二期が放送されている『けいおん!!』。先月にカルチャー情報誌『CUT』(ロッキングオン発行)の表紙、今月9日には、小学館発行のモノマガジン系雑誌『DIME』の表紙を飾るなど、最近ではアニメ誌のみならず一般誌でも取り上げられるようになった。こういう系統の雑誌ではジブリ作品やエヴァンゲリオンなど、ある程度一般に知られたものが表紙を飾ることは何度かあったが、最近の放送形態の主流である深夜アニメとなると前例がない。なぜ『けいおん!!』がこれほど取り上げられる様になったのだろうか。

 考えられる理由としては、深夜アニメとしては異例のTBS系列28局での全国放送ということがあるのだろうが、それ以上に音楽やキャラ版権で売れるという、優秀な映像コンテンツという側面が、カルチャー情報誌で取り上げる大きな要素といえるだろう。

 00年代後半から深夜枠アニメは、それまでのオリジナルアニメの相次ぐ収入的な失敗により、ある程度ファンの数が分かる漫画やラノベ原作付きのアニメが主流となった。その中でも四コマ漫画原作モノの売上は好調で、『けいおん!!』の原作もそこに分類されている。このジャンルの特徴は、可愛い女性キャラ数人で話が展開されており、恋愛要素どころか男キャラも殆ど出てこないゆるい日常が淡々と展開されいくのものが多い。そこが没個性型のギャルゲー主人公や、どちらかというと設定を練り過ぎて視聴者に伝わりにくいオリジナルアニメに飽きた人々には魅力的だったようだ。元からキャラ売りなので、キャラソンやグッズも売れやすく、スポンサー収入が期待できず映像コンテンツそのもので勝負するしか無い深夜アニメではこれ以上無い良質なシャンルといえる。

 その中でもこの作品は09年のアニメ一期の放送以来、異例な程の売上を出している。制作会社が『涼宮ハルヒの憂鬱』や『らき☆すた』を手がけてきた京都アニメーションだということも影響にあるのだろうが、これはまだ単行本の一巻が発売されたころから注目していたTBSのアニメ製作スタッフの優秀さあってのものだろう。「報道」でも「バラエティー」でも、最近なにをやってもダメなTBSだが、このアニメ部門だけは評価できる。

 しかし、最近雑誌で話題となるフジテレビのノイタミナ枠やTBSの深夜アニメ枠は昔から原作モノが多かった枠で、00年代初頭以降、オリジナルアニメが多く放送されてきたテレ朝日系列の深夜枠は消滅。テレビ東京系の枠も激減と、現具やゲーム業界のタイアップの無いオリジナルアニメの採算を得るのがいかに難しいかを浮き彫りする形となってしまった。ここ数年オリジナルアニメは直接的な収入が見込める劇場公開やOVA化するケースが多く、エヴァヒット以前の90年代初頭までの、原作モノは地上波で、オリジナルはOVAで制作する傾向に戻りつつある。『けいおん!!』のヒットはここ十年の深夜アニメの方向性に対し、ひとまずの答えを出した結果なのかもしれない。(斎藤雅道)

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