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ハリファックスの切りつけ屋は実在したのか?(2)

 いまから77年前の1938年11月、カナダのハリファックスで若い女性が次々と襲撃され、パニックにおちいった住民が地域社会に大きな混乱を招いた。ハリファックスの人々は姿なき襲撃者におびえ、警察の対応は後手後手に回った。そして、業を煮やした住民は自警団を結成し、夜間の地域巡回を始めるに至ったのである。

 しかし、その自警団が新たな混乱の火種となってしまう。

 まず、若い女性のふたりづれが暗がりで鋭利な刃物を持つ男に襲撃されたものの、軽いけがを負っただけで逃げ出すという事件が発生した。当時のハリファックスは数万の人口を抱える港町だったが、路上襲撃事件は少なかったようで、地域社会に極めて大きな衝撃を与えた。加えて、それからの数日間で第二、第三の襲撃事件が発生し、被害者の傷はいずれも軽かったのだが、地元の新聞が犯人逮捕に懸賞金をかけるほどの騒ぎとなっていった。

 しかも、新聞が懸賞金をかけた翌日の11月25日金曜には、それをあざ笑うかのようにふたつの事件が発生し、パニックは事件と無関係の人間まで巻き込んでしまう。

 ひとつ目の事件はパブから店に帰った雑貨屋の店主が「見知らぬ男から襲撃を受けた」と、軽い切り傷を見せつつ騒いだのだが、翌日には自作自演が露見したというものだった(そのため、資料によっては襲撃事件に含まない)。しかし、もうひとつの事件は単なる狂言騒ぎに収まらない、深刻な事態を招いてしまう。

 雑貨屋店主の襲撃狂言と相前後して、顔や腕を血まみれにした若い女性が助けを求めて民家へ駆け込んだ。集まった人々に対し、女性は買い物に出たところを何者かに襲撃されたと告げ、自警団は犯人の姿を追った。ところが、騒ぎの中で群衆がひとりの男を襲撃犯と誤認し、暴行を加え始めたのである。男は自警団のメンバーで、駆けつけた警察が身柄を確保して命を取り留めたが、それまでに襲撃されたどの被害者よりも深い傷を負っていたとされる。

 週末の27日にはさらに別の女性が襲われて軽い傷を負い、また酔っぱらいから犯人扱いされた無関係な少年が暴行を受けるなど、パニックの連鎖はとどまるところを知らなかった。しかし、月末から翌月にかけて、事件は急展開をみせるのである。

(続く)

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