「執行部メンバーではなかったが、他団体とのパイプも持つ人物だったから、少なからず衝撃を受けた」(他団体幹部)
この非常事態にあって、六代目山口組にはいっそうの危機管理意識がうかがえたのである。
「4月末、直系52団体の全本部にマスクを送り、感染防止策を促したと聞く。新型コロナ問題は戦力にも関わりかねないから、総本部が動いたようだ」(同)
だが一方で、隙を突くかのように警察当局が取り締まりを強化。4月20日、弘道会の統括委員長を務める松山猛・十代目稲葉地一家総長らを、愛知県暴排条例違反の疑いで逮捕したのだ。
「県が定める禁止区域内の飲食店から、用心棒代を受け取ったとされました。松山総長は3月上旬に風営法違反で逮捕され、下旬には別の飲食店に関する同容疑で再逮捕されており、今回で3度目になります。こうも逮捕を繰り返す背景には、警察当局が弘道会の弱体化作戦に、本腰を入れ始めた可能性すらあるのでは」(全国紙社会部記者)
稲葉地一家からは、名古屋射殺事件と山健組系組員射殺事件で、それぞれヒットマンが出ているのだ。
地元関係者は、こう話す。
「松山総長は、弘道会の若頭補佐から統括委員長に昇格したばかりだった。野内正博若頭をサポートする立場にあり、執行部メンバーとしても組織への影響力はあるはずだ。だからこそ、一時的だったとしても、警察は松山総長を現場不在にしたかったのではないか。そうでなければ、再々逮捕なんかしないだろう。完全な嫌がらせだ」
分裂抗争は膠着状態にあるが、当局との攻防戦は激しさを増しそうだ。