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森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」 ★勝負に出た吉村大阪府知事

 ソフトバンクの孫正義社長が3月11日に〈新型コロナウイルスに不安のある方々に、簡易PCR検査の機会を無償で提供したい。まずは100万人分。申込方法等、これから準備〉とツイートした。検査を受けたいのに受けられない人が多いからという善意だったのだが、このツイートに批判が殺到した。そんな大量の検査をしたら、病院に軽症患者が殺到して、医療崩壊が起きるというのが理由だ。

 確かにその可能性はある。いきなり100万人は無謀だろう。しかし、市中感染率の調査は必要だ。医療崩壊を防ぐように配慮しながら、段階的に検査数を増やしていけばよい。どれだけの人が感染しているのか分からなければ、国民の不安は消えないし、収束の時期も見通せない。何より適切な対策の打ちようがない。

 いま分かっている唯一の数字は、3月14日現在でPCR検査を受けた人が1万2060人で、そのうち感染していた人が699人という事実だ。感染率は約6%ということになる。もちろんこれは症状のある人や感染者との濃厚接触者だけを対象にした数字なので、市中感染率がこれより低いことは確実だ。ただ、実際にそれが何%なのかは、まったく分からない。封じ込めが可能な市中感染率は2%程度と言われるが、そこに収まっているかも分からない。

 そのなかで3月10日、政府は、当初2週間程度としていた大規模イベントなどの自粛要請をさらに10日間程度継続することを求めた。これで自粛期間は1カ月近くに及ぶ。

 問題は、いつまで自粛が続くのかということだ。エンターテインメント産業だけでなく、飲食店の売り上げは大幅減、観光地は閑古鳥が鳴き、新幹線も飛行機もガラガラだ。「このままでは干上がってしまう」という悲痛な叫び声があちこちから上がっている。

 そのなかで、大阪府の吉村洋文知事が立ち上がった。原則中止か延期としてきた大阪府主催イベントを3月21日から再開することを決めたのだ。(1)室内の定期的な換気、(2)参加者間の距離を1〜2メートル程度空ける、(3)近距離での会話や発声を避けるという3条件をつけ、国が自粛要請を再度延長しても、イベントを再開するという。吉村知事は、感染の実態が十分に分かっていないことを認めたうえで、「活動を抑え込み続けたら社会経済が死んでしまう。リスクを避けながら徐々に戻していくべき」と語った。

 勇気ある決断だ。ただ、吉村知事が批判を受けるのは確実だ。公演を再開した宝塚歌劇団に世間からの批判が殺到して、再び休止に追い込まれた実例がある。ましてや再開したイベントで新たな感染者を出したら、吉村知事の政治生命にもかかわるだろう。

 私は、国の姿勢はずるいと思う。市中感染率のデータも示さないままに、活動自粛の時期や内容を自治体に丸投げしているからだ。

 私は、吉村知事の挑戦が成功することを心から望んでいる。大阪でうまく行ったとなれば、同調志向の強い日本人は、次々に活動を再開させると思うからだ。その意味で、日本経済の命運は、吉村知事の挑戦の成否にかかっている。

 仮に吉村知事の挑戦が失敗に終わっても、政府は一切責任を負わないだろう。政府の自粛要請を無視して、イベント再開した吉村知事を切り捨てるだけなのだ。

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