観光名所の京都、奈良で、名勝・旧跡の地に大型リゾートホテルの建設計画が持ち上がり、「金でなんでも買えると思うな!」と地元住民らが猛反発しているという。
「京都で進むのは、米高級ホテルチェーン、ハイアットホテルズグループによる“京都東山計画”。場所は世界遺産の清水寺に近い二寧坂(二年坂)の北で、東山を代表する老舗料亭『山荘京大和』が改装を機に運営を委託し、敷地内に『パークハイアット京都』を建設するという。これに周辺環境の変化を危惧する商店主や住民が、京都市と建設する竹中工務店に対し、質問状を提出、説明を求めているのです」(地元記者)
2019年の開業を目指し現在は準備段階というが、二寧坂は土産物店や飲食店が並ぶ、東山の観光客銀座。
「建設工事が始まれば、工事車両が頻繁に行き来し、観光客の流れに当然支障が出る。竹中工務店側は工事期間を観光のオフシーズンに集中させると説明していますが、東山は1年じゅう観光シーズンですからね。大型開発による土砂災害も心配です」(地元住民)
一方の奈良では、宿泊施設の拡充を目指す県が、春日大社に連なる奈良公園の南端区域に、高級リゾートホテルの建設を計画し、これまた地域住民の大きな反発を呼んでいる。
「そもそも建設予定地は奈良公園外の市街化調整区域で、環境を守るためにホテルを建てたらいかん場所だったんです。それを県は、奈良公園の区域に編入するという裏ワザを使ってきた。そんなやり方でいいんでしょうか」(地元住民)
先に開かれた地元説明会で奈良県側は、予定地内に老朽化した土塀等が多いことに言及し、「整備計画を実行しなければ、当該地はそのまま放置されることになるが、それでもいいのか」といった強気な発言もあったという。
「このような動きに、さらに危機感を募らせる奈良市高畑町の住民は、『高畑町住民有志の会』を結成、『奈良公園の環境を守る会』とも連帯し、横断幕を掲げるなどホテル反対を強くアピールしているのです」(前出・地元記者)
住民たちは自ら盾となっても阻止する覚悟だという。
しかし、両ホテル騒動の背景には、いずれも観光客の増加にともなう宿泊施設不足がある。
ある旅行代理店関係者はこう言う。
「本当に観光客の増加に対応する気があるのなら、リゾートホテルよりも、安価な民泊やシティーホテルの充実の方がよっぽど効果的なのではないか」
奈良では建設計画に反対する署名は増えており、現時点で3万人超の署名が集まっている。文化と景観に対し、それを受けいれる宿泊場所と外国人観光客…果たして解決策はあるのだろうか。