ZERO PLUS社は昨年8月、マニラ市郊外に『フジ・ジャパン・オークション』を設立し、輸出からオークションまでを自社で一貫する経営に乗り出した。気になるのは、日本製中古品をフィリピンに輸出すると、いったいいくらもうかるかだ。
「総売り上げの25%をオークション会場の運営者が取ります。したがって残りが輸出業者の取り分です。ここからコンテナの輸送料、関税、人件費などを差し引いた残りが純利益になります」(荒津氏)
現在、ZERO PLUS社は同業他社から、フィリピンに輸出したいとの依頼が殺到しているという。倉庫が手狭なこと、人手不足が依頼する主な理由だ。同社では現在の月14本のコンテナ数から一気に40本までさばける態勢に改め、大幅に輸出業務を展開していく方針だ。
遺品を含めここまで国内の中古品が大規模に海を渡るようになった背景には、国の政策も少なからず影響している。政府は資源の有効活用、環境負荷軽減などの観点から2000年に『循環型社会形成推進基本法』を制定し、7条1項で「循環資源の全部又は一部のうち、再使用をすることができるものについては、再使用がされなければならない」と定めた。同法の制定はリサイクルショップやフリーマーケット業界を活気付けた。さらにライフスタイルとして“断捨離”や“ミニマリズム”なども注目され、いまや片付けがビジネスとなり、関連業者も増加。収納関連業者団体は全国に30団体以上存在するほど注目される分野となった。新規参入する者も多く、業者は乱立傾向にある。
“収育”の普及に努めている『日本収納検定協会』(東京都港区)は、整理整頓に収納を加え、片付け上手のプロを育てることを目標に掲げている。石塚あや事務局主任は、現状の遺品整理の問題点をこう指摘する。
「悪質な業者も少なくないですね。遺品整理の場合、私たちはまず依頼主の所有権放棄を確認してから片付けを始めます。国内向けか、輸出向けかを一つずつ仕分けして査定を行い、それに見合った金額を依頼主に支払います。悪質な業者はこんな面倒なことはせず、一気にビニール袋に放り込み、一山いくらで買い取るというやり方です」
中古品のフィリピン輸出を手掛ける『合同会社ストリートビート』(横浜市都築区)は、フィリピンのオークション運営会社の日本代理業者に、月4本のコンテナ輸出を依頼するいわば下請け会社だ。親会社は現在、フィリピンのアラバンやブランカなど4カ所でオークションを運営しているが、セブ島にも進出を計画しているという。同社の佐々木慶治代表はこう話す。
「最初はタイに輸出していました。仏教国なので遺品整理で回収した豪華な仏壇や黒縁の額はよく売れました。しかし、経済発展にともない中古販売が鈍くなり、3年前からフィリピンに切り替えました」