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市場規模4兆円と囃すマイナンバーに3つの重大リスク

 今年の10月、日本国内に住んでいる全ての人々に、住民票のある市区町村から簡易書留が届く。12ケタの社会保障・税番号、すなわちマイナンバー制度が来年1月からスタートするのに先駆け、政府が割り当てた個人番号を通知するためだ。
 政府は「公正・公平で、きめ細かな社会保障などの行政サービスを実現するため」と導入の狙いを強調する。国や自治体がマイナンバーで個人情報を管理し、資産を把握するだけでなく税金や保険料の徴収を迅速に行う一方、マイナンバーを与えられた個人は行政手続きが簡単になり、将来的にはカルテなど医療情報とリンクさせる計画も浮上している。

 確かに個人の利便性が高まり、脱税や生活保護の不正受給などがあぶり出せることから、大手メディアは“ウエルカム”の報道に徹している。まして情報ネットワークの構築には巨額の資金が不可欠で、大手シンクタンクは早くも「4兆円市場」と強気のソロバンをはじく。だからこそ大手証券幹部は鼻息が荒い。
 「ここへ来てマイナンバー関連銘柄を物色する動きが加速している。大企業ならば関連投資だけで5000〜6000万円を投入する。おかげでNTTデータ、電算システムなど受注競争で有力視されている会社の株価が値を飛ばしている。日立やNECを推奨する向きもおり、こうした熱気が日経平均株価をさらに大きく押し上げそうです」

 これを称し、株式市場では「マイナンバー特需の到来」と囃し立てる。実際、証券界では関連銘柄をリストアップした資料が出回り、“営業マンの必読書”になっているという。
 とはいえ、繰り返せばマイナンバーの旗振り役は国民ではなく、消費税引き上げなどを通じて税収確保にまい進したい政府である。そこに秘めた思惑が働かないわけはない。

 実は今、鳴り物入りでスタートするマイナンバー制度には大きなリスクが指摘されている。第1点はこの制度が円滑に機能するためには巨大な“日の丸ネットワーク”を構築する必要があることだ。しかし制度が発足した後、システム運営に関与する面々が自分の立場を逆手に取って個人情報を盗み出せば、本人に成り済まして年金や保険の不正受給が可能になる。それどころか他人の銀行口座を不正に操作し、自分の口座に送金させることも大いに可能である。
 「システム受注にシャカリキになっているIT企業は口をそろえて『当社の社員に限ってそんな心配は無用』と言うでしょうが、下請けを含めてどこまで徹底できるかは怪しい限り。世間を騒がせたベネッセをはじめ、この手の話には事欠きません」(ITベンチャー企業)

 リスクの第2点は、今や海外のハッカーが舌なめずりしていることだ。彼らが持ち前のIT技術を駆使して日の丸ネットワークに侵入すれば、それこそ何でもできる。現に日本のマイナンバーに近い制度を導入した米国や韓国では、いち早くハッカーの侵入を許し、その修復作業に膨大な資金を投入している。セキュリティー対応では見劣る日本が彼らの餌食になれば、それこそ目も当てられない。

 実はもっと深刻な問題がある。先日、自民党がNHKとテレビ朝日の担当役員を党本部に呼び出し、放送内容をめぐって聴取した。このとき、多くのメディアが「権力の介入」と批判したのは記憶に新しい。しかし、マイナンバー制度が定着すれば、もう“恫喝”では済まなくなる。これが第3のリスクである。
 「権力者が自分の敵を抹殺しようとする場合、マイナンバーは極めて好都合です。12ケタの数字から相手のプライバシーが全て把握できるため、必要ならば別件逮捕に踏み切らせて刑務所に放り込める。こんなことがまかり通れば国家権力に歯向かう輩に対し、強力なけん制球になる。むろん、テレビなどで政権批判を執拗に繰り返すコメンテーターを抹殺することだって可能です」(永田町関係者)

 これは極端なケースかもしれないが、かつて飛ぶ鳥を落とす勢いだった大物政治家サイドを取材した経験がある経済記者が振り返る。
 「先方の女性秘書の対応が悪かったことに対し、批判がましいことを口にして電話を切ると、男の名物秘書(故人)から折り返し電話があり『恫喝する気か!』と絡んできた。これぞ大物政治家のご威光です。当時、マイナンバーが定着していたら果たしてどうなっていたか…。冷や汗ものです」

 マイナンバーは個人情報を一括管理する制度だ。政府広報が謳うように便利な側面がある一方、そこに“思惑”が一つでも絡めば、国民にとっては“凶器”と化す。そんな恐ろしい面がこの法律にはあるのだ。
 わざわざ消費増税論議に隠す格好で進められた以上、今さら政府がこの点を丁寧に説明するわけはない。

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