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五輪最上位スポンサー延長を決断! 奈落のパナソニックが放つ窮余一策

 パナソニックが国際オリンピック委員会(IOC)と交わした契約が憶測を呼んでいる。同社は1988年のカルガリー冬季五輪からIOCの“TOP(最上位)スポンサー”を務めてきた。これまでは2016年までの契約だったが、ソチ五輪の開幕を機に2024年まで契約を8年延長したのだ。

 昨年9月、2020年の東京五輪が決定した。当時の同社は2年連続でトータル1兆5000億円の赤字を垂れ流し、見事なドロ船経営に陥っていた。そのため「これ以上、五輪のスポンサーを続ければ破綻しかねない」との観測しきりだった。
 「パナは世界のAV(音響・映像)機器代表として日本企業では唯一、IOCとTOPスポンサー契約を結び、五輪ロゴを使ったテレビCMを世界中に流すほか、オリンピック会場や選手村など周辺に大型スクリーンや監視カメラなどを独占的に納入してきました。しかし、その費用は1開催で100億円超に膨らむといわれています。これでは“撤退”観測が浮上したのも無理はありません」(情報筋)

 ところが、津賀一宏社長は延長に舵を切った。決断の裏に何があったのか。
 鍵は昨年10月31日、パナソニックが発表した9月中間決算にあった。最終利益が過去最高の1693億円を記録したのである。大赤字から一転しての急回復に津賀社長は「構造改革の方向に大きな間違いがないことが見えてきた」とご満悦だった。舞台裏をパナOBが解説する。
 「この間、会社は国内外で4万人に及ぶ大量の社員を削減したほか、東京の汐留ビルや旧東京本社ビルを売却し、トヨタをはじめ有力企業の保有株や半導体工場なども次々と売り飛ばした。そんな空前絶後ともいうべき苛烈リストラの結果、去年の9月中間期でやっと黒字化にこぎ着いたのです。しかし、構造改革と言えば聞き心地はいいですが、実態はリストラに名を借りた大量の“人柱”を立てることで何とか帳尻を合わせたにすぎません」

 果たせるかな、パナは今年3月期の連結最終損益の見通しを1000億円の黒字(昨年3月期は7542億円の赤字)と、従来予想の2倍に引き上げた。むろん苛烈リストラの“仇花”であることを津賀社長が知らないわけはない。だからこそ、その後も半導体部門で7000人削減など「ライバルに比べ、明らかに周回遅れ」と揶揄されながらも、情け容赦ない人減らし策に突き進んでいるのが実情だ。
 それにしても、ソロバン計算に長けたパナソニックが、高額の契約金を払って五輪のTOPスポンサーに固執する理由は何なのか。
 「東京五輪が決まった以上、プライドにかけても絶対に譲れないということでしょう。というのも、TOPスポンサーは1業種1社が大原則で、これを降りることは『会社が火の車になった』と白状したに等しく、株式市場で売り崩しの標的になりかねない。だから歯をくいしばってでも、その座をキープする必要があったのです」(五輪関係者)

 問題は、大枚投入に見合うだけの経済効果が得られるかである。関係者が続ける。
 「自国での東京五輪ともなれば、宣伝効果はソチやリオ('16年)の比ではありません。何せアテネ('04年)や北京('08年)では、パナを含めて薄型テレビが爆発的に売れた。しかもテレビの買い替えサイクルは一般に10年前後とされ、'11年の家電エコポイント制度の終了と地デジ移行の買い替え特需に乗ってテレビを買った人たちは、東京五輪のときに買い替えを迎える。これではパナが“五輪特需”の捕らぬタヌキを決め込まないわけがありません」

 だが、今やテレビ事業ではパナをはじめ国内勢がそろいもそろって韓国勢の後塵を拝している。現に'12年のロンドン五輪ではパナが3D映像を世界に配信して技術力を見せ付けたが、その先端技術が短期間で韓国、中国勢に取り込まれてしまった。下手すると東京五輪開催のころには、パナが「不採算」を理由にテレビ事業から撤退している可能性さえある。
 パナは旧パナソニック電工が手掛けてきた住宅・電気設備の「住宅分野」と、カーナビ対応を含む「自動車分野」を新たな成長戦略の柱と位置付けている。だが津賀社長は「家電事業は当社のDNA」と公言、この分野の建て直しに意欲を見せている。その延長上に五輪のTOPスポンサー継続があるのは明らかだ。
 「勝てば官軍でしょうが、社員が恐れているのは目的を達成するために手段を問わなくなることです。過去に輪をかけた苛烈リストラにまい進するようだと、踏み台にされる社員はたまったものじゃありません」(前出のOB)

 2020年、東京五輪マークの下にパナソニックのロゴも燦然と輝くだろうか。

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