search
とじる
トップ > 社会 > 同一車種で4度… ホンダ リコール後遺症の泥沼

同一車種で4度… ホンダ リコール後遺症の泥沼

 「そこまで追い込まれたか」と、市場関係者が驚きを隠さない。ホンダが10月から11月にかけて埼玉製作所狭山工場(埼玉県狭山市)や鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)で生産調整に踏み切った。狭山工場の場合、1日当たりの生産台数を約2割削減し、毎週金曜日に操業を停止する。大手自動車メーカーが平日の操業を取りやめ、在庫調整を迫られたのは極めて異例である。
 ましてホンダは今年の4〜6月決算が大幅な増収増益となり、来年3月期の業績見通しを上方修正したばかり。純利益は6000億円を見込み、過去最高だった2008年3月期(6000億3900万円)に肩を並べる。だからこそ、記者会見した岩村哲夫副社長は「消費増税の影響は軽微」と分析、7期ぶりの最高益達成に自信満々だった。

 それが、一部操業停止の異常事態である。一体、舞台裏では何があったのか。
 「相次ぐリコール騒動で品質管理の徹底を余儀なくされ、新型車の生産・販売が遅れた影響がモロに出た。販売に急ブレーキがかかれば在庫が膨らむ。これを減らす近道が生産調整です」(ディーラー関係者)

 '09年から'10年にかけて全米を揺るがしたトヨタのリコール騒動ほどには世間の注目を集めなかったが、ホンダのそれも歴史に残る大事件である。同社は昨年9月、伊東孝紳社長が「最重要車種」と位置付けるコンパクトカー『新型フィット・ハイブリッド』を発売した。ところがエンジン制御プログラムの不具合から10月、12月、年が明けた今年2月、さらに7月と計4回にわたって慌ただしくリコールを実施する始末。確かに「従来のHVと違ってホンダにとっては未知の、それも複雑なシステムばかり」(情報筋)という事情があったにせよ、鳴り物入りで投入した看板車種がこれだけ醜態を晒せば、ユーザーがホンダ車に不信感を募らせたとしても不思議ではない。
 追い打ちをかけるようにホンダは10月2日、エンジン制御コンピューターのプログラムに不具合があるとして軽乗用車『N‐BOX』など5車種のリコールを発表した。この中には問題のフィットが含まれていないとはいえ、世間の目には「またか」と映る。

 ところが、つい最近までのホンダは事態を深刻に受け止めなかった。既に3度目のリコールに踏み切った直後の4月末、今年度の国内販売を前年度比21.4%増の103万台に設定したのが好例だ。
 昨年度は過去最高を更新した軽自動車の好調な販売に支えられ、前年度比18.4%増の84万8379台を記録した。そこへフィット販売がフルに寄与し、全面改装を含む新型車を過去最多となる6車種投入すれば、100万台の大台をクリアできるとの甘いシナリオに他ならない。

 道理で岩村副社長、7月末に行った4〜6月期の決算会見で「4月の受注は前年同月比805だったが、6月には98%に回復し、夏休み明けには前年並みになる」と自信を見せたわけだ。しかし、ホンダOBは苦笑する。
 「会社は販売に自信がある。だから消費増税の駆け込み反動は限定的なものにとどまり、国内販売の100万台達成は十分可能と強調したいのでしょう。しかし生産調整に踏み切った以上、販売は目標を下回る。これで前年割れに沈めば目も当てられない。そのとき、強気ラッパを吹き鳴らしてきた経営陣がどう釈明するか、これはもう見ものです」

 エコカー補助金は'12年9月で打ち切られた。その反動で昨年の新車販売は大幅に落ち込んだ。従って今年6月には対前年比で98%まで回復したとはいえ、基準となる前年の数字が悪過ぎたのは見逃せない。それどころか「ホンダがアピールする来年3月期の増収増益も、眉にツバして聞く必要がある」と指摘するのは自動車担当の証券アナリストだ。
 「ホンダは対ドルで1円の円安が120億円の営業増益になる。いくら最終利益が過去最高に迫るといっても、現実には円安の下駄を履いた効果が大きい。その分を差し引いたら威張れたものではありません」

 ホンダは来年からF1に復帰する。当然、高度なHV技術が要求されるが、そこにリコール騒動で露呈した技術的欠陥が白日の下に晒されるようだとイメージダウンに直結する。
 「販売台数の少々の落ち込み程度であれば、ディーラーへ出荷した時点でホンダ本社の売上に計上するなどの手法が駆使できますが、もしF1でトラブルを起こせば弁解の余地はない。ホンダの技術陣は“メカオタク”ぞろいなんですが…。それだけに伊東社長は内心『本当に大丈夫か』と疑心暗鬼になっているはずです」(前出・ホンダOB)

 ホンダは相次ぐ“リコール・ショック”の重い後遺症に悩みそうだ。

社会→

 

特集

関連ニュース

ピックアップ

新着ニュース→

もっと見る→

社会→

もっと見る→

注目タグ