久保田専務は、朝日新聞の常務から昨年6月、テレ朝に転出した。久保田氏は朝日では経済畑出身で、数年前は次期社長候補ともいわれた実力者。だが、当時の担当である「広告・事業」部門が不振だったため、その責任をとらされる格好でテレ朝に出されたとみられている。
一方、昔と比べ朝日とテレ朝の力関係も大きく変わった。テレ朝のパワーが強まったのも「退任」の遠因だろう。
「テレ朝社長は、早河社長の前任者である君和田正夫会長の頃まで、親会社だった朝日新聞の“指定席”だった。君和田会長は'05年6月に朝日新聞専務から天下り、4年社長をつとめた後に会長になった。久保田専務も6年ほど前なら社長コースは固かったはず。この人事は、朝日の、テレ朝に対する発言力がなくなったことを示唆しています」(テレ朝関係者)
こうなったのは、'09年の株主対策が原因。
その年、代表取締役副社長から社長に昇格した早河氏は、商法抵触の問題があるため、朝日新聞との株の持ち合いをやめて親子関係を解消したのだ。
テレ朝は朝日の大株主・村山美知子社主から、発行済み株式の11.8%を240億円で取得し、朝日新聞に対する発言力を強めた。
その前後に、朝日新聞はテレ朝の株を売却。出資比率を35.9%から24.7%まで下げた。これで朝日の、テレ朝に対する発言力はかなり低下したのである。同時に、天下りによる朝日役員の“指定席”獲得も困難になった。
テレ朝は退任する久保田氏の代わりに、朝日から粕谷卓志取締役を「常務」で受け入れる。結局、朝日からの役員は、粕谷氏と朝日新聞の新社長である木村伊量氏の2人だけ。今後、増えることはないだろう。
「いまのテレ朝を、朝日の派閥抗争に破れた役員の受け皿にしたくない、というのは社員全員の気持ち。今後はさらに関係は希薄になり、朝日新聞社長が形だけ非常勤で役員に入る程度になるでしょう」(テレ朝関係者)
これからは、早河氏の独裁政権が長期に続くとの声しきりだ。