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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 自動車産業はガソリン車に回帰?

 日産自動車は5月26日、スポーツセダンのスカイラインに、資本提携先の独ダイムラーから調達した排気量2000ccターボエンジンを搭載したモデルを追加すると発表した。ベンツのEクラスに搭載されているのと同じエンジンが、スカイラインに搭載されることになるのだ。
 ハイブリッドエンジンのスカイラインは、最も安いモデルで462万円だが、ガソリンエンジンのスカイラインは383万円だ。もちろん、装備が違うので単純比較はできないが、79万円も安い価格は、やはり圧倒的なインパクトがある。

 いまやハイブリッド乗用車が新車登録の3割以上を占める日本の自動車市場だが、世界で見るとそのシェアはたかだか3%程度。その最大の理由は、ハイブリッド車の値段が高いということだ。
 それでもハイブリッド車の方が燃費がよいのだから、車両価格の高い分を燃費で取り返せるはずだと思われるかもしれない。スカイラインの燃費性能は、ハイブリッドがリッターあたり18.4キロに対して、ガソリン車は13.6キロだ。ただ、79万円の価格差を取り戻そうと思うと、25万キロ以上乗らないと採算が合わないことになる。しかも20万キロ以上走れば駆動用バッテリーの交換が必要になる。それには15万円以上のコストがかかってしまうから、ハイブリッド車がガソリン車と比べてトータルコストが割安だということは、少なくとも現時点では言えないのだ。

 一方、電気自動車も同じような状況にある。世界の自動車市場のなかでは、ハイブリッド車同様、ほんの小さなシェアしか獲得していない。もちろん、電気自動車の燃費は、革命的に安く、1キロあたり2円を切る。ただ、問題は1回の充電で走れる距離で、現時点だと200キロ程度しか走れない。
 一部の学者は、低コスト大容量の電池が開発されて、車はすべて電気自動車に置き換わると主張している。しかし、現実問題として画期的な電池が開発されたという話は聞かない。つまり、あと数十年は、いまのエンジンを搭載した車が自動車の主流であり続ける可能性が高いのだ。

 そのことを国内自動車メーカーも認識しているのだろう。トヨタ、ホンダ、日産など、国内自動車メーカー8社が、共同でエンジンの基礎研究を行い、燃費向上と排出ガスの低減を目指すことが5月19日に発表された。
 8社は、自動車用内燃機関技術研究組合(AICE)を設立して、それぞれの自動車メーカーからの拠出金と経済産業省からの補助金を活用することで、世界の自動車メーカーと対抗できる環境対策エンジンを開発することにしている。開発の中心は、ディーゼルエンジンになるとみられている。もともとガソリンエンジンと比べて燃費性能がよく、しかも欧州で排ガス低減技術が進歩したため、最近ではすっかり環境対策エンジンとしての地位を確立しているのだ。今回の日本メーカー8社の共同開発は、技術開発の遅れを取り戻すためのものと考えられるのだ。

 どうやら、ガソリン車からハイブリッド車、そして電気自動車というわかりやすい乗用車の発展段階は、我々の単なる思い込みだったのかもしれない。日本のハイブリッドが、携帯電話のようにガラパゴスにならないとよいのだが。

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