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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 トランプショックは日本独立のチャンス

 安倍総理が米国大統領選で勝利したトランプ氏と11月10日に電話会談を行った。
 選挙前には、絶対に会おうとしなかった安倍総理は、「たぐいまれなリーダーシップにより、米国がより一層偉大な国になることを確信している」と手のひらを返し、トランプ氏も「日米関係は卓越したパートナーシップであり、この特別な関係をさらに強化していきたい」と、優等生のような返礼をした。
 経済界も、経団連の榊原会長が「豊富なビジネスの経験を持っている。現実的な政策が出ることを期待する」とし、サントリーホールディングスの新浪社長は「切っても切れない日米経済の現実を直視してほしい」と、トランプ氏が現実路線に転換することを期待したコメントを発表している。

 しかし私は、「人間の性格は、そう簡単には治らない」と考えている。特に70歳を迎えたトランプ氏に柔軟性を求めることは、無理がある。トランプ大統領は米国製造業の復権という信念を貫くだろう。
 その意味で、日本経済にとって最も危険なのは、トランプ氏が中国と日本を為替管理国と非難してきたことだろう。
 これまで、日本が金融緩和を行うためには、水面下で米国の許可を取らなければならなかった。日本が金融緩和をすれば、円安・ドル高に向かうから、トランプ大統領は、今後、日銀の追加の金融緩和を認めないだろう。そうなったら、じわじわと円高が進み、日本の製造業が大きな打撃を受ける。
 安倍政権は、TPPへの参加や集団的自衛権行使、辺野古での新しい米軍基地建設など、さまざまな米国への貢物を積み重ねて、それと引き換えに米国に金融緩和を認めてもらった。それがアベノミクスの本質だ。それができなくなるということは、アベノミクスが一巻のおしまいになるということだ。

 それを防ぐ方法は、基本的に二つだ。米国に更なる大きな貢物を出して、金融緩和を認めてもらうこと。もう一つは、米国の傘下を離れて、独立国として行動するということだ。
 私は後者が望ましいと思っている。イギリスがEUから離脱したのと同じように、日本も米国の属国から離脱するのだ。そうすれば、日本は自由に金融政策を決めることができる。
 そんなことをしたら、日本は米国の軍事力で守ってもらえなくなると、政府や財界は考えている。しかし、フィリピンのドゥテルテ大統領は、米国支配からの決別を宣言したが、2014年に結ばれた米軍のフィリピン軍基地への駐留を事実上可能にする「米比防衛協力強化協定」を、米国が破棄しようとする気配はみられない。日本に駐留する米軍は、日本を守るために存在するのではなく、アジアや中東地域に米軍が侵攻するための前線基地なのだから、米軍撤退の可能性は小さいだろう。

 万が一米軍が撤退したら、日本は自主防衛をすればよい。
 フィリピンは、アジア最弱の軍隊と言われながら、日本のわずか20分の1の防衛費で、自国の安全を守っているのだ。
 外交交渉の手段の一つとして、とりあえず米軍の撤退を容認することが、外交交渉の第一歩になるのではないか。

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