そのメンバーは、小池百合子都知事、敵対関係にあるはずの自民党の二階俊博幹事長、山崎拓元副総裁、武部勤元幹事長。しかし、それ以上に目立ったのは、小泉純一郎元首相だ。
いったいこの場で何が話し合われたのか。自民党関係者がこう明かす。
「会食の主宰は小泉氏。表向きの会食理由は小泉政権時代の“同窓会”ですが、都議選を巡り対立を深める小池氏と自民党の手打ちという、明確な狙いがあった。その先にあるのは、数年後、自民党の支持を得て小池氏を担ごうという動きですよ」
つまり、日本政界史上初の女性首相の誕生に向け、破局話の出ていた小池氏と安倍首相をもう一度握手させようという、小泉氏の仕掛けというわけだ。
先の関係者によれば、その動きを思わせる出来事は、この会合の中と外で何度か起きていたと話す。
「小泉氏は、この料亭の家庭的な味が大好きで、特に首相時代はひいきにしていた。いわば自分の“庭”に、今回、まず小池氏と二階氏が差しで話ができる場を設けたということ。そこでは、“都議選までは小池新党と自民党は、ガチンコで正々堂々と戦いましょう”という話が切り出されたといいます。対して二階氏は、問題は都議選後の関係をどうするとかという点と、豊洲市場の問題を解決しなければ、最終的に窮地に立つのは小池氏だと、早期の決着を求めたという」
これに小池氏はどう反応したのか。関係者が続ける。
「小池氏としては都議選後はノーサイドで、自民党都議らが協力してくれれば一緒にやっていきたいということ。さらに4年間の都政がうまくいくように、二階氏に頭を下げたといいます。二階氏も“安倍首相も小池さんとは上手くやっていきたい”と応え、席が暖まったところで二階氏が都議選後について、“小池新党と自民党が手を組めば最強になる”と、連携まで持ちかけたそうです」(同)
そこまで話が進んだ時、個室に突然、安倍首相が登場したという。
「同店の別室でニトリHDの似鳥昭雄会長らと会食を開いていた安倍首相が、小泉氏らの会合を聞き、挨拶をしに顔を出したのです。『お手柔らかにお願いします』とにこやかに話し掛けた安倍首相に対し、小池氏も笑顔で応じた。このでき過ぎた流れは、都議選後を見据えた小泉氏と二階氏の連携によるものと見られているのです」(全国紙政治部記者)
ただ、安倍首相と小池氏も、実は対立を望んでいないというのが周囲の見方だ。
「会合直前の17日、2人は銀座に完成した複合商業施設『GINZA SIX』のオープニングイベントに招かれ、やたらと親密な雰囲気をアピールしていましたよ。安倍首相からは『銀座と言えばデュエット曲の“銀座の恋の物語”。小池さんと一緒に歌ってもいい』、『東京五輪もしっかりと協力していきたい』と、暗に今後の共闘を思わせる発言まで飛び出しましたからね」(同)
つまりは、東京五輪までは自分が首相だが、その後は小池氏を、といった安倍首相の思惑も見え隠れし始めているというのだ。
「それこそ初の女性首相に、ということ。安倍首相が可愛がってきた稲田朋美防衛相は、南スーダンの日報問題や森友学園問題で今や首の皮一枚。そんなことも、安倍首相が小池氏に傾き始めた理由でしょう」(同)
この状況を察知した小泉氏が、小池氏を立てて、一気に流れを自分に引き寄せようとしているという。
「それぞれをつなぐキーマンとして、安倍首相と会食した似鳥氏が急浮上しています。小泉氏は東日本大震災の際に放射能被害に遭った米兵救済基金を募っているが、似鳥氏はこれにポンと1億円を寄付している。さらに似鳥氏は、安倍首相とプライベートでゴルフもする仲であり、二階氏とも何度も会食を重ねるほど昵懇。小泉氏としては、うってつけのパイプ役として似鳥氏を選んだと言えます」(同)
前出の関係者によれば、会食では小池氏に「きちんと実績を残せば次のステップもあるし、それを応援する」との檄も飛ばしたという小泉氏は、一方で持論の反原発の動きも活発化させている。4月14日の「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」(会長=城南信用金庫・吉原毅相談役)の顧問就任もしかりだ。
小泉氏周辺関係者は、こう語る。
「小泉さんは、世界も日本も、いずれ反原発、脱原発が主流になると見ている。その旗を小池新党、自民党に掲げさせ、ポスト安倍に自民党と連携した小池首相誕生を思い描いているということ。今はそれをスタートさせる好機と見て、あの場を仕掛けた。小池首相で官房長官が小泉進次郎というのも面白いんじゃないか」
小泉氏最後の大勝負となるのか。